泣き顔マニア ２

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この日の夜は、おうちでチャーハンを食べた。

わざわざ高いチャーシューを買って
ネギもたまごもいつもよりいいものを。

それでも、



「イマイチ………」



やっぱりあの店には敵わない。

………ううん、
裕太と一緒に食べるチャーハンには敵わないんだ。



カラン……、とスプーンを放って
そのまま寝転び目を閉じる。






"ありがと"って裕太の言葉が何度も頭の中でリピートされるのに
ここまで来てもまだ泣けない。

悲しくて辛いはずなのに
不思議と冷静っていうか………、
実感がないのかな。




どうしてなんだろう━━。






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＊＊＊＊＊

「裕太、おはよっ」




次の日の朝、声をかけると
驚いたように私を見てから
おはよ、って笑顔を見せた。




「なんだ、Aもっと落ちてるかと思って
どう接すか悩んでたのに」


「え？」


「催眠が解けたかな」


「どゆこと……？」




言ってる事の意味が分かんない私を置き去りに
裕太はふわって笑って、私の髪の毛を撫でてくる。




「………っ、///」




こ、これはちょっと予想外すぎて
さすがに言葉をなくして赤面してしまう。

どういう状況でこんなことされてんの、私……っ。





「Aには絶対幸せになってほしいな、俺」


「幸せに…？」


「うん。
俺とか遥さんとか、もう実の家族よりも
Aには一番幸せになってほしいかも」




あまりにも優しい顔と、優しい声でそう言われるもんだから
ここが会社だってことを忘れそうになってしまう。

裕太に私は幸せにはしてもらえない。

だからこそ
一番の幸せを願われて………、





「………うん、」





"ありがとう"こそ今は言えなかったけど

時間はかかっても
今度こそちゃんと裕太から離れられるような
そんな気がしたから。






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結局裕太と遥さんは
いきなり付き合うとかそういうんじゃなく
友達から仲良くなっていきましょう、ってことになったらしい。

結婚するはずだった男の人は
他に何人も女の人がいる人で
結婚前に気付けて良かった、って。

それで裕太とまた歩み寄ったっていうことは
裕太の大切さに気付いたのかもしれない。

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