泣き顔マニア ２

８７ ページ38

.


「まったくもう、嘘が下手だなAは」


「え？」


「寝るよ、はい、おやすみー」


「わっ、え、ちょっ、」





ぼふっ、と布団をかけられて
むぎゅっ、と私を乱暴に胸に押し付けたかと思うと
閉じ込められてそのまま…………、






「Zzzzz…」





寝落ち。






「……………、」




でもきっとこれは本当に寝てないなって分かるけど。

口元むにゅむにゅしてるし
さすがにこんな一瞬では寝られないでしょ。






「どっちが嘘下手なんだか」





そう呟くと、ふふってちっちゃな笑い声が聞こえて
その振動を感じながら私も目を閉じた。


一緒の布団で寝てても何も起こらず寝ちゃうってことがショックな気持ちと



少しだけ………、

少しだけだけど、安心しちゃってる気持ち。






.






.






＊＊＊＊＊

「裕太ぁ〜終わらない〜」


「またぁ？
最近やる気なさすぎじゃない？」


「違うのよ！私が抱えてる量がさ？！」


「はいはい、」






分かってますよー、って。

最近入ってくれた新人ちゃんが
とてつもなく仕事が出来なすぎて………、
というかガチガチのゆとり世代っていうか。

裕太も私もゆとり世代ではあるけど
ここまで酷くないよねってほど。

だからその分の仕事がたんまりと私のとこに来ちゃうのよね。





「………ありがと、」


「帰り、なんか奢ってよ」




泣きつけばこうやってなんだかんだ手伝ってくれるし
結局奢らせようともしないで、裕太が奢ってくれるんだもん。


とまぁ、あれからもこんな毎日が続いてた。




北山先輩とも、




「お前らまた残業？」


「先輩…、あの新人ちゃんどうしたらいいもんですか…」


「我慢するしかねぇな、
それかお前が恨まれるの覚悟で厳しく躾けるか」


「苦手なんですよねぇ…、そういうの」




ちゃんと普通に会社では普通に接してるつもり。

会社では、っていうか
会社以外で会うことはなくなっちゃったけど……。






「じゃ、俺は帰るから頑張れよ〜」


「うい〜っす」




裕太がパソコンから目も離さずに返事をして
私はお疲れ様でした、と先輩に目をやると
目が合って、何か言いたげにそのまま視線を下にずらした。

８８→←８６

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す