信仰149 ページ30
手前が好きだ、A_________
頭の中をぐるぐると廻る言葉、中原さんの射抜くような真剣な目、非現実的な状況と、正直な心臓。
中原さんの熱、私の熱。
突きつけられた、唐突の告白。
「な、か……はら、さん?」
「まだこの状況分かってねぇのか、手前」
そう言うと中原さんの唇がまた降りてきて、拒絶する間もなく再び私の唇と重ねられた。
じわりとそこから広がっていく熱にうかされそうになる私の目からよく分からない涙が一粒だけこめかみを降りていく。
ゆっくりと、肌を侵食するように。
しかし刹那口内を蹂躙するかのようにぬるりとした肉塊が唇を分け入った。
「ふ、ぅ……っ」
それが中原さんの舌だと分かった瞬間ぼっと顔に熱が集まる。
その熱を持った肉塊は歯列をなぞり、私の舌を絡めとるように動いて私の口内を蝕んでいく。
息が苦しくなってソファのカバーをぎゅっと掴むと中原さんの唇は離れ、どちらのものか分からない唾液が紡いだ銀糸が徐々に細くなっていって消えた。
息が荒いのは私だけで、中原さんは口元を少し拭ってはぁと小さく息をついただけだった。
「その様子だと深いのは初めてみてぇだな、A」
ふ、と笑みを零す中原さんの妖艶な空気に私はただ息を整えることしか出来なくて、何か眩しいものを見るようにして目を細めた。
「……嫌いになっただろ?幻滅しただろ?もういっそのこと、俺のこと恨んでくれよA」
「中原さん……?」
片手で顔半分を覆う中原さんの口元は悲しげな弧を描いていた。
「酷ェこと、したくねぇ……手前に、こんな風に無理矢理なんざ……こんなの、どっかの青鯖と一緒だろうが!」
胸がきゅぅと痛んだ
「でも、このままじゃ手前にまだ酷ェことしちまうかもしれねぇ。好きなんだ、A……手前のことなんざ好きになりたくなかった。でも、好きだ。手前のこと離してやれねぇ。太宰のものになっちまうくらいなら手前のこと傷つけてでも離したくねぇって、そんなロクでもねぇことまで考えちまうんだよ!」
悲しい顔をしないでください
中原さん、お願いだから
「俺は、手前を……
好きにならなきゃよかった」
そう云って中原さんは顔を伏せたまま私の上から退いて部屋を静かに出て行った。
暫く呆然とした後声を上げて泣いてしまう自分が嫌いで嫌いでたまらない。
私はもう二度と、双黒の信仰者になんてなれない
私は二度と、
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おれんじ(プロフ) - とてもとても面白かったです!なんか感動しちゃって泣いちゃいました笑素敵な作品をありがとうございます! (2021年4月3日 22時) (レス) id: 0eb527936d (このIDを非表示/違反報告)
チキン - すごいっす!双黒が凄いかっこよく書かれてました。!でも太宰さんENDも見たい気持ちも少しあったかも……。これからも応援してます★ (2019年6月24日 22時) (レス) id: 4977555463 (このIDを非表示/違反報告)
存在理由【レゾンデートル】 - そしてこの作品とても面白かったです!また新作も作ってくれると嬉しいな〜なんて・・・。。これからも頑張ってください!!(◇∀◇) (2018年5月3日 23時) (レス) id: 2916bffe8d (このIDを非表示/違反報告)
存在理由【レゾンデートル】 - 初コメントでこんなこと言うのもあれですが、ハイキューの個人指導塾のやつ、修正おわってなくていいのでパスワード解除していただけないでしょうか・・・?無理にとは言いません!!そ (2018年5月3日 23時) (レス) id: 2916bffe8d (このIDを非表示/違反報告)
yun(プロフ) - 初コメ失礼します!とても素敵な作品でとても楽しく読ませて頂きました!続編楽しみにしています! (2018年3月5日 15時) (レス) id: 568876bb4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無気力感 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年5月6日 16時