※双黒好き以外は間違っても見ないで下さい※

信仰131 ページ12

頭が痛かった


と云えば嘘になる。


本当は頭なんて痛くなかった。

それどころか思考はすっきり晴れていて、脳は厭になる程働いていた。

だから全てを理解した。


(私、自分の異能で、お二人を_______)



「Aちゃん」



嗚呼、望んでいた声。



「おい、A」



心の底から望んでいた、双つの声。

本当はその声に縋って大声を上げて泣きたかった。

振り向いて二人の元に駆け出したかった。


でもそんなこと出来る筈が無い。


私は二人を殺しかけた。

無意識だろうが記憶がどうたらとかそんなのは関係無い。

私はこの自分の異能で二人を、双黒を殺しかけたのだ。


二人のためなら喜んで命を投げ出せるのに、私は


(私、は)



「Aちゃん」



はたりと肩に触れた温もりと、信じられない程優しい声色。


無性に泣き出しそうになって、

でも泣ける筈が無くて、私に泣く権利なんて無くて

それでもぼろぼろ涙が出てきて、情けなくて。



「ごめん、なさい……」



謝ったって済まない。

いっそのこと今此処でお二人に殺して貰えたらどれだけ楽だっただろう。

どれだけ幸せだっただろう。



「……謝ってんじゃねェよ馬ァ鹿」



その瞬間、腕と脇の隙間に帽子が見えた。

あっと思ったらそのまま立たされて、私は中原さんに支えられて立っている状態になってしまった。


「ッ、駄目、です。
私、私、二人の、こと」

「このくらいで私達がへばると思ったのかい？心外だなぁAちゃん。何年の付き合いなのさ」


そう云って太宰さんは私の手を握った。

左は中原さんに支えてもらって、右は太宰さんが包んでいて。

暖かくて、けれどそれが申し訳なくて、泣きそうになって。


「手前如きの雑魚異能でくたばると思ったのかよ馬鹿A。お前は黙って支えられてろ」


もう涙は止まらなかった



「帰ろう」
「帰るぞ」



重なった二人の声が愛おしくて、急激に気持ちを軽くしていって。

まるで魔法みたいだなぁなんて、異能者にそんなことを思うのは変だろうか。



「一寸、真似しないでよ中也」

「ああ？手前が真似してきたんだろ」

「なんで中也如きの台詞を真似しなきゃならないのさ」

「ンだとこのミイラ男が！先刻までへばってた癖に偉そうにしてンじゃねぇ！」

「うるさいよダサ帽子小男。君だって格好付けてるけど本当はヤバイんでしょ？」

「ああ！？
って、笑ってんじゃねェよA！」



嗚呼、なんて




(……なんて幸せなんだろう)

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