【銀魂】今日も傘屋は騒がしい【坂田銀時】

34 時々という名のレア感 ページ35

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『だッ、だだだ旦那！！？ 何してんですかちょっと！！！』





旦那の不意打ちすぎる抱き寄せは少しばかり刺激が強すぎたみたいだ。
だってもう直に体温伝わってくるし、現在進行形で旦那の胸元にお邪魔しちゃってるし。
何より上を見れば旦那とバッチリ目が合うような距離。

あぁ、体中が熱いよ、火傷寸前だよ神様ッ…！

血液が沸騰するんじゃないかってくらい体温上昇中の私を他所に、旦那は平然として「耳元でデカイ声出すんじゃねぇ」と私の頭を軽く叩いた。
うーむ、大変落ち着いていらっしゃる…。





『…ていうか、なんでこれが寂しさを紛らわす事に繋がるんですか。
もっと話を聞くとか色々あったでしょうに』





「うっせぇ、お前だって餓鬼の頃は辛い事あったらオカンオトンにこうしてもらったろ」





『まぁそうですけど…私、』





私、もう二十歳ですよ。

そんな強がった言葉を頭の隅へと追いやって、代わりにもっと素直な言葉を脳みそから引っ張り出した。





『いえ…このまま甘えときます』





「それでいい」





降り注ぐ優しい声と、私の頭を撫でる、乱雑ながらも何処か安らぎのある手。
そして確かに見えた、旦那の小さく笑った顔。

その全てがじんわりと心に染み渡って、今まで固まっていた何かが、ふっと解けていく。
言葉で表せない不思議な心地よさが、尖った感情を綺麗に溶かしていった。

＿＿...あったかい人。





『旦那が毎日これぐらい優しかったらいいんですけどねー』





「お前も毎日こんぐらい素直だったらいいのにな」





『お互い様って事ですね』





とは言っても、優しくなったり素直になったりは、時々しか見えない部分だからこそとても貴重に感じるもの。
毎日優しかったら有り難み忘れちゃうし、毎日素直だったらレア度に欠ける。
何事もバランスだバランス。





「……んで、俺そろそろ寝たいんだけど」





『え、まじですか』





眠たそうな旦那にそう言われ、もうそんな時間かと慌てて時計を見る。

だいぶ前からある茶色の壁掛け時計＿＿＿もう買い替えようかなぁなんて思いにかられながら、針の先端に目をやった。
短針は十、長針は六を指している……ってことはつまり十時半だ。





『え、十時半とかまだ夜ですら無いじゃないですか夜はこれからですよ！！
健全ぶったって旦那が色々と汚れまくってるのは既にバレてんですから、今更躊躇するとか見苦しいですよ！！』





「オイコラぶん殴られてぇのかテメェ！！！」

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