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▼制御不能 羽風薫 ページ8

「まったく……いつになったら素直になるのかえ?」

「っ、うるさいよ朔間さん」



本当に煩い。
いつになったら素直になれるか、なんて俺が聞きたいのに。俺だってわかってるよ。馬鹿みたいに彼女を傷つけて泣かせて、それなのに好きで。可笑しいんだ。本当に。早く諦めなければと、早く離れないと、と。そう思う度にそれが出来ない自分に、なんとも言えない煩わしさが湧いてくる。



「はぁ…、前も言ったがのう」



そんな調子では我輩が貰ってしまうよ、と吸血鬼が囁いた。何回聞いただろうか。この言葉。いつも聞く度に胸が焦げそうにチリつく悪魔の言葉。

__________本当に煩い。

狙ってるんでしょ。そんなの知ってる。朔間さんだけじゃないことも知ってる。彼女は可愛いから。魅力的で、どこか危なかしくて、そしてとっても無防備。男からしたら最高なんだろう。あんな可愛い子、あんな単純で純粋で優しい子。
そこらにひょっこり、なんていやしない。

知ってる。分かってる。
どうしようもなく傷つけるだけなのに、そんな彼女に心底惚れ込んでるのは俺なんだって。



「薫くん、お主…Aの嬢ちゃんのことを本当に好きなのかや?」



鋭い眼光に貫かれた。
好きな女の子を案じる優しくて痛い光。何が夜闇の魔王だ。何が老体だ。彼女に何も興味なんてないですよ、なんてフリしておいて。あんただって、そんなにもお熱なんじゃないか。本当に好きか?…馬鹿言わないでよ。好きに決まってる。好きだから、好きになりすぎたから。
こんなにも、どうしたらいいか悩んでいるのに。



「好きだよ。こんなにも誰かを好きになったことないんだ。…少なくとも、自分の制御が効かなくなるくらいには、Aちゃんに惚れてる」



だから渡せないんだ。朔間さんの方が、彼女を笑わせられるかもしれないけど。それでも、彼女を笑顔にするのは俺であって欲しいんだ。

あぁ、俺は不器用なんだって。それも知ってる。
君を笑わせるんじゃなくて、毎度泣かせるしかしてないのも。だってこんなに一人の女の子だけしか見えなくなったのは初めてで。好きで、好きで。本当に好きで堪らない。

他の女の子にするように、優しくしてやりたかった。でも、彼女は俺の特別なんだ。他の女の子と同じ扱いなんて、俺が許せない。もっと君に優しく触れてやりたいのに。
それが出来ないのが歯痒くて。

あぁ、好きだよ。
好きなんだAちゃん。
どうしたらいい?君を笑わせたい。



「ふぅ、らしいぞい…嬢ちゃん。」

「_____…は?」






呆れたような吸血鬼の声に顔を上げると、驚いた様子の彼女がいた。

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春永詩帆(プロフ) - 最高です、素晴らしい作品をありがとうございます。 (2021年12月31日 23時) (レス) @page28 id: 46695abdda (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子(プロフ) - 藍原春陽さん» 申し訳ありません!只今修正致しました。不甲斐なくもたった今気付きました……。ご指摘ありがとうございます! (2020年11月28日 23時) (レス) id: 9398c4b575 (このIDを非表示/違反報告)
藍原春陽(プロフ) - 全部の話がきらきらしていてとても好きです。ひとつだけ、本文中で凪砂が凪紗になっていることが気になりました。できれば訂正お願いします。これからも頑張ってください。 (2020年11月28日 0時) (レス) id: b2c9d88620 (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子(プロフ) - のんさん» ありがとうございます!嬉しいです (2020年8月15日 12時) (レス) id: 3919641d26 (このIDを非表示/違反報告)
のん - 応援してます (2020年5月30日 1時) (レス) id: b1f19877ba (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:素敵帽子 | 作成日時:2019年8月18日 12時

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