▼君を姫にしてやらない 月永レオ ページ23
騎士は､姫と結ばれない｡ 永遠に｡ 絶対に｡騎士は守る者で､姫は守られる者だから｡そんな一種の主従関係｡超えることが許されない､禁断の白くて太い線が引かれてる｡そんなものは誰にも見えてないけれど｡それでも､それは越えてはいけない｡絶対に｡それは騎士の掟｡それは王家の姫の宿命｡
埋まることの無い､高い高い身分の差というやつだから｡
だから､君はおれの姫じゃない｡守るだけの､そんな冷めた関係じゃないだろう？Knightsの決めた姫君はあんずだ｡お前じゃなくて､彼奴｡革命を成し遂げ､この夢ノ咲に笑顔を降らせた彼奴｡
ヴァイオリンを片手に､おれと一緒に好き放題してる君じゃない｡授業をサボって､時たま学校にも来なくって､来たと思えばおれと音楽ばかりしてる君じゃない｡口の悪い小娘なんて､騎士の守るべきお姫様なんかじゃないから｡
｢おれさ､この時間結構好きだよ｣
君は姫じゃない｡姫にしちゃいけない｡“姫”なんて､届かない立場に君を残しちゃいけない｡君と結ばれることが叶わないなんて､あっちゃいけないんだ｡
『奇遇だな､私もだ』
そう言って笑うその笑顔を｡風に柔らかく靡くその黒髪も｡ヴァイオリンを滑るその美しい指先だって｡君が姫になっちゃえば､もう触れられない｡ 見られない｡だから絶対に君を遠くになんて離してやらない｡みんながみんな､君に魅了されていくんだから｡誰かの姫になってもらっちゃ､困るんだ｡
許さないぞ｡許さない｡
君の隣に居ていいのはおれだけなんだから｡自由気ままなヴァイオリ二ストだからって､王さまから離れるのは許さない｡これからも君はおれの隣でヴァイオリンを弾けばいい｡おれの作った曲を勝手に変えて､それをおれに怒られてればいい｡そうやって､二人でのんびり音楽をやっていけたらそれでいいんだ｡
『今まで､弾くのは他の野郎が作った曲でも何でも良かったんだ』
『でもさ､ ＿＿＿＿＿っ！？』
君は手の届かないお姫様なんかじゃない｡触れられなくて､必死に手を伸ばしても手に入れられない存在じゃない｡高い高いお城の窓から､物憂げに外を見つめるような｡自分で動きたくても動けない､そんなか弱い女じゃないだろ？
だって｡
そんなお姫様じゃあ､“王さま”をこんなに虜に出来るわけがないから｡
『っ､月永｡ ……いま､…き､きす』
｢…お前が可愛すぎて､我慢できなかった｣
ごめん､ゆるして｡
作曲家と､ヴァイオリニスト｡音に愛されたおれと君｡騎士と姫じゃなくて､それならおれ達にぴったりだと思わないか？
だから君を姫なんて､呼ばない｡
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春永詩帆(プロフ) - 最高です、素晴らしい作品をありがとうございます。 (2021年12月31日 23時) (
レス) @page28 id: 46695abdda (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子(プロフ) - 藍原春陽さん» 申し訳ありません！只今修正致しました。不甲斐なくもたった今気付きました……。ご指摘ありがとうございます！ (2020年11月28日 23時) (レス) id: 9398c4b575 (このIDを非表示/違反報告)
藍原春陽(プロフ) - 全部の話がきらきらしていてとても好きです。ひとつだけ、本文中で凪砂が凪紗になっていることが気になりました。できれば訂正お願いします。これからも頑張ってください。 (2020年11月28日 0時) (レス) id: b2c9d88620 (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子(プロフ) - のんさん» ありがとうございます！嬉しいです (2020年8月15日 12時) (レス) id: 3919641d26 (このIDを非表示/違反報告)
のん - 応援してます (2020年5月30日 1時) (レス) id: b1f19877ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：素敵帽子 | 作成日時：2019年8月18日 12時
