アイドルの恋愛事情。

▼そんな君を知りたくなかった 七種茨 ※零奈様リクエスト ページ14

そんなに申し訳なさそうな､許して欲しそうな顔をしたって｡
いつもみたいに､気にしてないよ､なんて可愛く笑ってあげない｡
…ねぇ茨､私は怒ってるんだよ｡


▽△▽



今日は､そこそこ大きな会場でのライブがあったと聞いている｡今をときめく大人気ユニット､Edenの片割れであるAdamが出演するという事で､会場は大層大盛り上がりしたそうだ｡まぁ､私はその場所には行けなかったのだけれど｡

完全予約チケット制だった今日のライブ｡
いつもなら､彼氏である茨が出演するライブは大体把握済みな筈なのだけど､今回は何だか急に纏まった話らしく｡茨もバタバタとしていて､そんなライブがあるなんて私には知らされていなかった｡

私が今日のライブの事を知ったのは､部活終わりにスマホを見た時だった｡今日のニュースとやらを見ていると､そこには “Adamのライブ 大熱狂” と書かれており､トップページには､大好きな私の彼氏の堂々たる写真が載せてあった｡ライブで高揚しているのか､少し熱を帯びた顔｡光る汗と､眩しい笑顔｡極めつけに､凛々しい瞳とばっちりキメられたウインク｡何処からどう見てもかっこいいアイドル｡
私の知らない､茨の顔だった｡



『ふぅん……｡ ファンの子にはこんな顔､するんだ』



それがアイドルである彼の役目なのに､私の知らない表情を､私の知らない女の子に向けてしているんだと考えると､ぢりぢりと胸が不穏な音を立てた｡あぁ嫌だな､なんて｡馬鹿みたいに独占欲が首を擡げる｡別にこれが今に始まった事じゃないけれど､それでも､目にするのはこれが初めてで｡
茨の事を理解しているつもりだと思っていたのが､これは吃驚｡本当につもりだったらしい｡

私の知らない茨を見るのが嫌で､ニュースを閉じる｡実に不快だ｡不愉快極まりない｡あぁ､行かなくて良かった｡本当に｡行っていたら､私はどうなっていたことか｡いつかは､茨の出演するライブを生で見たいなどとほざいていた､昔の私をぶん殴ってやりたい気分だ｡良かった｡今まで行かなくて｡
良かった｡今日気付けて｡

もやもやもや､とぐちゃぐちゃな気持ちのまま｡
それを振り切るように､家まで全速力で走った｡


家に帰って､もう日課になっているTwitterチェックを始めた｡最近のアイドルの兆候とか｡少しでも茨を取り巻く状況を知れたらな､なんて言う勝手な私のエゴ｡まぁこの行為を私は後から後悔するのだけど｡染み付いた習慣は怖いもので､さも息するように､私はアプリアイコンをタッチしてしまった｡


スクロールすると､そこには｡





『…………は､？』

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