続・地獄の沙汰も貴方しだい【鬼灯の冷徹】

ゆく年くる年 ページ21

大晦日の夜

仕事が一区切りついた頃、どちらからともなく二人は執務室の大掃除をはじめた

執務室のスペースの半分以上を占めているのは、二人の大きめのデスクである
その他には、共有で使っている本棚と小さな冷蔵庫が置いてあるだけなので、掃除のメインは各々のデスクの整理となった


あ「うへぁ！！」


突然の奇声に鬼灯がAの方を見ると

一枚の写真を手に持ち、顔を赤らめながら固まっている


鬼「どうしましたか？」

あ「なっ、な、何でもないです！」


Aの方に近寄ると、慌てた様子で写真を身体の後ろに隠して後ずさる


鬼「見せられない様な写真なんですか？」

あ「いやっ、ちょっ、、」


鬼灯が一歩近付くと、Aは一歩後ずさる


――そろそろ行き止まりなんですけどねぇ


壁に背中をぶつけ「しまった」という表情をしたAの顔の両側に手を付き、退路をふさいだ


鬼「そろそろ観念して、お見せなさい」


耳元でそう告げても、Aは真っ赤な顔で首をふるだけで、写真を離そうとはしない


鬼「仕方ありませんね」


鬼灯は、ぼそっとつぶやくと唐突にAの唇を奪う

Aが空いている手で胸元を叩き抵抗してくるが、構わずに舌を絡め取ると、徐々に身体から力が抜けてゆく

腰に腕を回し、支えると

力なく下げられた手から写真を抜き取り、唇を解放する


あ「、、つっ、、、急に、なんて事、、」

鬼「Aが素直に渡さないからですよ」


写真を確認すると

膝枕で昼寝をするAの額に、鬼灯が口付けているところが写されていた

以前、小判が持ってきた写真を引き出しの奥にしまって、そのまま忘れていたらしい


――小判さん、よく記事にしませんでしたね……彼にもお歳暮、送っておくんでした


あ「あの、、鬼灯さん、、、そろそろ、離して下さい」


腰を抱えられたまま

壁と鬼灯の間に挟まれているAが、恥ずかし気に訴えてきた時

年越しを告げる、鐘の音が響いた


鬼「もう、年越しですか。Aと出会ってから一年が早い気がします」

あ「私もですよ」

鬼「来年も一緒に、年を越せると良いですね」

あ「来年も、再来年も、、百年後も一緒ですよ」


鬼灯は、少し照れたように微笑みながら、そう言ったAを抱き締めると

再び唇を奪った


鬼「今年も、よろしくお願いします」


唇の上で囁くと、頬を赤らめたAは


あ「こ、こちらこそ」


と恥ずかし気に答え

ぎこちなく、鬼灯の首に腕を回した

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