【呪術廻戦】 これは、君を想うまでの物語

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高専の地下を通っている鍾乳洞。気温は低く、天井から幾つもの鍾乳石が下りているそこは呪詛師呪霊たちの高専からの避難ルートであった。壁面に亀裂が入って木の根が僅かに顔を出す。刹那、怒濤の如く飛び出してきた木々の密集を横目に一足先に逃亡したサイドテールの呪詛師がぽつりと呟いた。


「結局俺なんもしてないよ。怒られちゃうかなぁ。それに比べて」

「君は働きすぎ」


木の根が開けた風穴から倒れ込んだ花御の身体は片腕から胸、脇腹に至るまで抉れるように欠損している。甚爾の”游雲”、夏油の呪霊、真希と伏黒の交戦、虎杖の”黒閃”、東堂の打撃。そして五条の虚式”茈”。これ程の攻撃を食らってまだ息をするその耐久力は賞賛に値するだろう。漏瑚や真人、他の特級呪霊であればもう既に祓われていた。ただ、負傷は重い。今でさえ返答を返す気力も立ち上がる体力も身体を修復する呪力も何一つ残っていない。

そんな花御を見つめている呪詛師の顔には嘲笑が浮かび舌舐めずりと共に言葉をかけた。


「かわいそっ。楽にしてあげようか」

「お疲れ」


肩に乗せていた呪具を手に取り刃を向けた時、肩に回された腕と薄っぺらい気遣いが行動を遮る。この高専襲撃に加わったのは高専生徒や教師陣と戦闘を繰り広げた花御、楽巌寺と相対した組屋鞣造、歌姫ら女子生徒に歓喜した重面春太。そしてもう一人。

ツギハギの人型の呪い、真人が仲間に対する仕打ちを許さなかった。同じ徒党を組んでいるが人間と呪いは相容れない。それを証明するとでも言わんばかりに刺々しい温度の声音を吐く。







「人間のくせに勝手すんなよ。殺すぞ」

「嫌だなぁ、優しさじゃんか。呪いにこの機微は分かんないか」

「で、ブツは？」


牽制と挑発を交わして双方矛を収めた後に重面が質問を投げかける。呪術界の要である高専への強襲。勿論、何の意図もなしにやるようなことではない。呪術師たちは山ほどいる。最強を冠する五条悟もいる。こちらからしても損害を抱えるのは承知していた。それでも成したのは、それ相応の思惑があったから。

真人には確固たる役目があった。達成感溢れた笑顔とウインク混じりに掲げた手の中と担いだ袋には完遂した証が眠っている。


「バッチリさ」

「特級呪物”両面宿儺”。高専保有分6本。同じく特級呪物”呪胎九相図”。1〜3番」


最初から、これが目的だったという訳か。

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