【呪術廻戦】 これは、君を想うまでの物語

＊ ページ19

加茂が、吐血した。崩れ落ちる体。吉野の毒はもうとっくに行動不能になる程染まりきっていた。それでも”赤燐躍動”で無理矢理動かした。それも、もう不可能。手足の痺れ、ブレる視界。遂に意識を失って床に倒れ込む。


「加茂さんっ！！」

「高菜っ、」

「ッ”澱月”！」


その瞬間を、呪霊は待ってくれない。咄嗟に吉野が全員を呼び出した”澱月”の中に入れ接近した花御の拳を無効化する。狗巻で止めて伏黒、吉野、加茂で攻撃し距離を取る。この繰り返しで”帳”の外を目指し学長らと合流。

それがこの場の最適解だった。リスクは呪言の効きが悪く教員との連絡をとる隙が無いこと。呪言の対処法を気付かれたら一環の終わりだということ。加茂は倒れた。接近を許した。窮地の状況。先手を打ったのは。


「【止まれ】！！」


狗巻の一言。行動を静止した刹那、吉野は加茂以外の澱月を解除し三人脇目も振らず疾走した。戦って、勝てる相手ではない。加茂が抜けたことはかなりの損害。準1級術師の穴は大きい。だが、ここで死ぬことはあってはならない。故に退避行動。







「吉野っ！加茂さんは！？」

「今、”澱月”の中で術式反転で解毒しながら治療してる！！」

「オマエ反転術式できんのかよ！！」

「明太子」


凄いなオマエ、とでも言いたげに狗巻と伏黒は吉野の顔を見る。反転術式は呪力操作の高等技術。他人を治癒するのは五条悟でも出来ず、さらに難しい。微細な霧状の毒を噴霧した時、”澱月”の中にいた伏黒は省くとして加茂にのみ毒の症状が出たのはこれ故。

反転術式から生まれた正のエネルギーを術式に流した術式反転。それは薬であった。抽出した解毒薬を吉野は自身に使ったのだ。吉野は彼女の言葉を覚えている。


＿＿＿『君の術式は毒だ。毒と薬は表裏一体。術式反転が使えるようになれば君は人を治すことも出来るだろう』

＿＿＿『毒を使って攻撃し薬を使って治癒させる、前衛で活躍できる両刀の呪術師』

＿＿＿『私は、君の今後に期待するよ』


その言葉は何時だって吉野の胸にあって。高専生として呪術師になった時。真っ先に反転術式の使い方を教えてください、と聞いたのだ。擬音語で一言の説明をする家入には四苦八苦したが五条と夏油の珍しい教師ぶりと自身の努力によってその技巧を獲得した。

今、まさに吉野は彼女の言う「前衛で活躍できる両刀の呪術師」として戦場に立っている。

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