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ーside 真一郎ー
「んだよ、今日はいつも以上にひっつき虫だな」
夏休みだからとAは俺の店か佐野家に入り浸る日々。ここのところAに会わない日はないといっても過言ではない。
万次郎が家にいればそっちに行くが、万次郎は外に出ることも多い。Aは人混みと夏の暑さには弱いからなおさら店に遊びに来る。
んで、今日は何故かいつも以上にキツく抱きしめてくるAの様子がなんだかおかしい。
「…どうした?」
『頭撫でて』
「へいへい」
作業を一回止めて、向き合えばそうねだってくる。頭を撫でてやるが、それでもなんだか顔が晴れないA。
『…………ちゅーしたい』
一瞬、なんて言われたかわからなかった。
「…………は」
遅れてその言葉を理解して「最近の中学生は危ねーな」と苦笑すると「しんいちろーがかっこいいのが悪い!」とちょっと怒ってるAが可愛いかった。
Aはこう斜めストレートにくる感じの発言をたまにする。いつも急すぎるから俺も何て言えばいいかわからない。
「どーも」
正直、俺は女にモテるわけじゃないからAはなんで俺をそんなに恋愛対象で見てるかわからなかった。
俺的には彼女にとって“兄貴”のような存在だと思っていたがそうではないのはいつもの態度でわかる。
もう一度作業に戻ろうとしてバイクに向き直そうとするがまだ浮かない顔をしているA。
「どうした?なんかあったか?」
『………しんいちろーがね、いなくなっちゃうの』
その言葉だけ言って、Aは目にいっぱい涙をためた。
『しん…っいちろーが、ッなまえよんでも…っ』
その涙はポタポタと雫が落ちていって彼女の頬を伝う。
『さきにいっちゃうの…!!』
Aは、いつもそうだ。
まっすぐで、馬鹿みたいに純粋で、Aの全部が俺のところに入り込む。
「…俺はどこにも行かねーよ。ここにいる」
いなくなるわけねーよ。
万次郎とエマを置いて、どこにも行けるわけがない。
それに何より、こいつが心配でたまらない。
“寂しい”と素直に言えない、どこかが、何かが欠けている不安定な彼女を置いて。
『……っほんと?』
「本当」
「だからもう泣くな」って言っていつもより力の入らない手でAの頭を撫でる。ついでに涙も拭えば、やっと泣き止んでくれた。
「(…大丈夫、そんなのただの夢だから)」
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水原カノ(プロフ) - さまさん» 本当ですね…!ご指摘ありがとうございます(^^) (2023年1月12日 16時) (レス) @page4 id: dc8eb8059d (このIDを非表示/違反報告)
さま(プロフ) - 3歳は小学生じゃなくないですか、、? (2022年12月29日 10時) (レス) @page4 id: 515ce007de (このIDを非表示/違反報告)
ゴリラの娘です - 何度も見返してしまうほど面白いです!それに更新早いですね!←三週間作品を更新してない人 (2021年10月12日 19時) (レス) @page19 id: dfc5bee49e (このIDを非表示/違反報告)
ゴリラの娘です - ゑ?、、、、、あっなんだ神かぁ。好きです!更新頑張ってください! (2021年10月12日 19時) (レス) @page9 id: dfc5bee49e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水原カノ | 作成日時:2021年10月11日 19時