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第29話「武装探偵社へようこそ」 ページ31

__________暖かい。
頭に乗せられる温もりが心地良い。
それに良い匂いがして_________



「ん………」

「あ、起きた。おはよう蓮華ちゃん」



聞き覚えのある声に一瞬で現実に引き戻される。
起きがけに目にしたのは胡散臭い笑みを浮かべた包帯の青年。



「!?き」

「悪いけど此処で叫ばないで私警察呼ばれちゃう」



太宰に口を覆われもごもごとしか云えなくなった。
そして寝起きながらに自分は見つかってしまった事を悟った。



「…で、何故私は貴方の膝を枕にしてるのですか」

「いやあ君がとても気持ちよさそうに居眠りしてたから」

「理由になってへん」



だが自分の外套を掛けてくれている辺り、気遣ってくれたのは確かだろう。
蓮華は溜息を吐いて彼の鳶色の瞳を見つめた。



「それにしても君さあ、外で居眠りなんて無防備すぎないかい?誰かに襲われても知らないよ?」



太宰の手が蓮華の太腿を撫でる。
触れた瞬間ビクッと反応するも、蓮華は何も動じずただ桜色の瞳を向けていた。



「………抵抗しないの?」

「本気かどうかなんて目を見れば判る。
一度血ィ吸った奴やったら尚更」



呆れたように云うと寝起きで重い身体を起こして借りていた外套を返した。
そしてそのまま立ち上がる。



「………私は探偵社には入りませんよ」

「それは、君が吸血鬼だからかい」



その問いに蓮華は答えなかった。
ただ紅色の瞳を伏せただけだった。



「たとえ君が吸血鬼でも、社の皆は否定しないと思うけど」

「人間と吸血鬼は決定的に違います。
私に血を吸われた貴方なら判るでしょう」



低く憂いを帯びた声で告げ、踵を返した。
だが後ろから聞こえたのは彼の含み笑いだった。



「でも君は人として生きたいのだろう?」



その言葉に蓮華は足を止めた。
紅色の瞳がゆらゆら揺れていた。
やがて戸惑いがちに頷くと、太宰は満足そうに笑った。



「なら人として生きれば良い。たとえ吸血鬼だろうと君にはその資格がある」

「で、でも……」



それは可能なのか。
許される事なのだろうか。
俯いていた足下の視界に彼の姿が映った。



「探偵社においで。そして多くの人を救うんだ。
そうすれば君の生きる意味も見つかるよ」

「………ほんまに?」

「本当だとも」



彼の手が自分に差し伸べられる。
僅かに震えた冷たい手をそっと彼の手に重ねた。
もう彼女に迷いは無かった。



「武装探偵社へようこそ」



少女は人として生きる事を決めた。

第30話「人間になる為の下準備」→←第28話「美しい化け物は何を望む」



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設定タグ:文スト , 原作沿い , 吸血鬼   
作品ジャンル:アニメ
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星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!気に入って貰えて嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2019年7月31日 21時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
赤砂晋助(プロフ) - この話好きやけんこれからも頑張ってください! (2019年7月22日 9時) (レス) id: 5ddd851753 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - 三輪さん» 実はそうなんです!バリバリの関西弁ではないのですが、気に入って貰えて何よりです!これからもよろしくお願いします! (2019年6月24日 15時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
三輪 - 吸血鬼ネタ最高です……!蓮華ちゃんが可愛い。。それとつかぬ事をお伺いしますが、作者さまは関西圏出身なのですか?方言が刺さります! (2019年6月24日 15時) (レス) id: e6d66e6ea7 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!!私も吸血鬼ネタが大好きで作りました!これからもよろしくお願いします! (2019年6月2日 23時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星木雪野 x他1人 | 作成日時:2019年6月2日 17時

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