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第28話「美しい化け物は何を望む」 ページ30

太宰はヨコハマの街を足早に歩いていた。
理由は勿論、逃げ出した蓮華を連れ戻す為である。
彼女の赤髪は目立つので居たらすぐに見つかる筈だ。



「それにしても、吸血鬼か………」



今朝彼女に寝込みを襲われかけたのは正直驚いたが、理由を問い詰めたところ予想外の答えが返ってきた。
だが同時に彼女の本質を垣間見た気がした。



『目の前にいる人間が化け物と知ったら、怖がったり消そうとするものでしょう』

『私も昔は普通の人間として暮らしていたんです』



何かと人間と吸血鬼の境界を引きたがる彼女は、おそらく自分の生きる価値を見出していないのだろう。
もしくは自分は生きてはいけないとさえ思っているのかもしれない。



「なのに周りの人間の事は大切にするなんて、優しい子だね」



血を求めてしまうから、人を喰らうくらいなら孤独を選ぶ。
しかし虎に追い詰められた時、彼女は確かに生きる事を選んだ。



「美しかったなぁ…」



孤独な吸血鬼が初めて口にした小さな本音は凛としていて儚かった。
弱みを隠す為に笑い,強くあろうと一人で抗う。



「だけどこれじゃあ、あの子が壊れてしまうよ」



自分が異物である事を理解しているが故に、彼女は自ら孤独の檻に閉じこもろうとしている。
だがそれでは駄目だ。それでは彼女は本当に堕ちてしまう。



「………あの綺麗な紅は汚して良い物ではないからね」



血を吸った後の彼女を思い出す。
太宰は思わず口元を抑えてクスクスと笑った。



『あんな可愛い姿、絶対忘れられない』



すっかりあの吸血鬼に魅せられてしまった。
自分がこんなに他人を求めた事があっただろうか。
胸の高鳴りを感じつつ、太宰は海の見える公園に辿り着いた。



「おや」



そこにぽつんとあるベンチに誰かが座っている。
近付いてみるとその人物は綺麗な赤髪で、自然と口角が上がるのが判った。



「綺麗なお嬢さん、どうか私と心中………ん?」



よく見ると探していた少女はベンチで居眠りしていた。



『ちょっと……この子無防備すぎない?』



思わず溜息が漏れる。
これでは良からぬ輩に攫われても文句が云えない。
それにこんな薄着では風邪を引いてしまう。



「蓮華ちゃーん、此処で寝たら風邪ひくよー?」

「スー……スー……」

「…起きないか」



結局自分の外套を掛けて、彼女が起きるまで待つ事にした。
硬いベンチでは寝づらいと思い,自身の膝も貸した。

第29話「武装探偵社へようこそ」→←第27話「彼女の二つの道」



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設定タグ:文スト , 原作沿い , 吸血鬼   
作品ジャンル:アニメ
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星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!気に入って貰えて嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2019年7月31日 21時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
赤砂晋助(プロフ) - この話好きやけんこれからも頑張ってください! (2019年7月22日 9時) (レス) id: 5ddd851753 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - 三輪さん» 実はそうなんです!バリバリの関西弁ではないのですが、気に入って貰えて何よりです!これからもよろしくお願いします! (2019年6月24日 15時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
三輪 - 吸血鬼ネタ最高です……!蓮華ちゃんが可愛い。。それとつかぬ事をお伺いしますが、作者さまは関西圏出身なのですか?方言が刺さります! (2019年6月24日 15時) (レス) id: e6d66e6ea7 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!!私も吸血鬼ネタが大好きで作りました!これからもよろしくお願いします! (2019年6月2日 23時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星木雪野 x他1人 | 作成日時:2019年6月2日 17時

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