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『呪うことで人を殺せるなら、こんなに簡単なことはないだろ』
そう言って笑いながら部屋を去った男。
界はしばらくしてから、フラフラと立ち上がって再び椅子に座った。
鍵盤を見つめているが、考えているのはピアノのことではない。
勝久『全く早く気付いてほしいものだ。自分がいかに無駄なことをしているかに』
ーーーうるさい。
『お前の母親は旦那の計画を知って……』
ーーーうるさい。
『お前自身が死ぬことだ』
バァーン、と界は鍵盤を叩きつける。
界「あ……あぁ……っ!」
ピアノの音が悲鳴をあげていた。
界は構わずピアノを叩き続ける。
A「やめなさい、界」
Aは界が壊れていく様子に耐えられなかった。
界はとめどなく涙を流しながら、しかしもう何を思って泣いているのかもわからないまま、何度も何度も音を鳴らす。
界「うああああああああああ!!」
A「界、やめて!」
Aは界に手を伸ばした。
刹那。
全ての映像がブラックアウトして、Aが瞬きした時、Aは何もない闇の中にいた。
Aは視線の先に界が向こうを向いて体育座りしているのを見つけると、一つ深呼吸する。
界は立ち上がってAの方に向いた。
界「お姉さん。僕の記憶を見た?」
少しうつむいていてAからは表情が見えない。
Aは目を細め、冷めたような視線を界に向けた。
A「それで貴方はあの男の言うこと間に受けて死んだのね」
界は顔を上げて屈託のない笑顔を浮かべる。
界「そうだよ。上手くいった。僕をあんな目に合わせておいて心の底では笑ってたあいつらを、殺してやった」
嬉々として語る界に狂気じみたものを感じながらもAは冷ややかな瞳のまま息をつく。
A「そう、じゃあもう復讐は終わったじゃない」
界は上げていた口角をピクリ、と引きつらせた。
Aが続ける。
A「清継さんが調べても一番初めのピアノの所有者である貴方にはたどり着かなかった。それは貴方がすべて殺したからでしょう、これまで貴方のピアノを持った者全て。まだ人を殺す気?」
Aは腕を組みながら責めるように界を見た。
界「何? 説教?」
A「貴方、本当は分かってるでしょう。どんなに殺したって満たされることはないと」
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Ren(プロフ) - とても面白いです!!更新頑張ってください! (2018年10月28日 23時) (レス) id: 572a8ca0c0 (このIDを非表示/違反報告)
ちさ(プロフ) - すごく続きが気になります!更新ゆっくりでいいんで頑張ってください!楽しみにしております (2018年7月21日 1時) (レス) id: d31ba2a391 (このIDを非表示/違反報告)
悠与(プロフ) - すごく読みやすくて素敵な作品でした!またお時間があるときに更新していただけると嬉しいです^^ (2018年7月19日 13時) (レス) id: 6d9bae1f6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:moon | 作成日時:2018年4月29日 22時