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さて問題はその一年後のことである。
界は熱心にリハビリを続けた。
しかしそれでも事件前のようにピアノを弾くことはできないままだった。
ある雨の日の夜中。
界は右腕に痛いとまでは言わないが、むず痒さを感じて寝付けなかった。
怪我の後遺症で天候によってそうなることがしばしばあったのだ。
界は起き上がって右腕をさすりながら、ベッドから降りる。
カーテンを開け忌々しそうに外を眺めていると、界は一人の男が屋敷の中に招き入れられているのを見た。
界はこの時間の来客に疑問を抱いて自室を出る。
界の部屋は二階にあった。
廊下は真っ暗だったが、階段の方まで壁に手をつきながら歩き、界は一階の廊下を階段の柵から見下ろす。
客人を迎えているのは勝久の秘書だった。一階の廊下の電気がつく。
そして玄関から勝久の書斎へ二人は歩いていった。
界は客人の顔を見て絶句する。
忘れたくても忘れられない顔だった。
界「どうして、あの男がここに……っ」
それは界の腕に傷を負わせたあのボディガードだった。
界は声を上げそうになるのを口に手を当てて、なんとか堪える。
鼻で荒く息を吐いた。
一つ唾を飲み込んで、界は階段を下り勝久の書斎まで足音を立てずに駆ける。
書斎の扉は何故か少しだけ開いていて、中から声が漏れていた。
勝久の声が言う。
勝久「約束は守ると行ったはずだ。何しろお前はあの子が一生ピアノでは生きていけないようにしてくれたからな。お前はここで私のボディガードとして再び高景社で雇おう。あんな腑抜けた親父よりもっと待遇を良くしてやる」
ボディガードの男は答えた。
「ありがとうございます」
勝久「しかしあの子はまだ性懲りもせず、ピアノを続けていてね。いよいよあのピアノも処分することになるだろう。しかし早く気付いて欲しいものだ。自分がいかに無駄なことをしているのかに」
秘書が勝久に乗って言う。
「あれ以上どうにもならないでしょうね、彼のピアノは」
勝久「全く、聞いてて哀れだ」
部屋にいる三人の笑い声が廊下にまで響いていた。
ーーーあの男は父親じゃない。
界は強く思う。
自身の息子に怪我を負わせ、しかもそれを実行した当人を再び雇うなど界のことを何とも思っていないことが明白であった。
勝久にとって界に何をどう知られようが大したことではないのだ。
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Ren(プロフ) - とても面白いです!!更新頑張ってください！ (2018年10月28日 23時) (
レス) id: 572a8ca0c0 (このIDを非表示/違反報告)
ちさ(プロフ) - すごく続きが気になります！更新ゆっくりでいいんで頑張ってください！楽しみにしております (2018年7月21日 1時) (レス) id: d31ba2a391 (このIDを非表示/違反報告)
悠与(プロフ) - すごく読みやすくて素敵な作品でした！またお時間があるときに更新していただけると嬉しいです^^ (2018年7月19日 13時) (レス) id: 6d9bae1f6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：moon | 作成日時：2018年4月29日 22時
