20話 ページ20
「…。」
「…。」
一瞬何が起こっているのか分からなかった。
わかるのはパンの入ったビニール袋が音をたてて落ちたことで、私が突然現実に引き戻されたってことだけ。
誰かが言っていたのか何かに書いてあったかは分らないが、唇に何かにあたった感覚があるのははっきりと分かる。
思わず自分の唇を触ってしまう。
リップを塗っているのに少しかさついた唇。
意識を戻すと目の前には光くんのドアップが見える。
「あ、えっと…」
放心状態の私の目の前で光くんは慌てている様子だった。そしてみるみるうちに赤く染まっていく光くん。
「ああああああ！！！ごめんなさいなんだぜー！！！！！」
と言い放ちどこかへと走っていく光くん。
「え！？」
パンの入ったビニール袋を持ちカバンをかけなおし光くんの後を追う。
「ちょっと待ってよ…！光くん！」
そうは叫んでいるものの全く追いつかない。
少しスピードを緩めているのか光くんの姿をとらえることだけで私にとっては精一杯だ。
公園を出て道を走っていく。
「はぁ、はぁ、はぁ…待ってよ…！！」
少しずつ息がきれてくる。
光くんが左角を曲がる姿が見えた時、私は小石につまずき転んでしまった。
「痛い…」
冬にむけてとタイツに変えたのが仇なのかタイツは膝のところで破けて膝から血が出ている。
「はぁ、はぁ、はぁ…光くんのところに行かなきゃ…」
血が出てる膝を見て見ぬふりして光くんが曲がったであろう道を改めて走る。
転んだ時にパンを何個か潰してしまい何個かは袋の中で中身があふれだしてしまっている。
左角を曲がってみてもそこに光くんの姿はない。街灯に照らされた目の前の道には誰も居なかった。
「光くん、なんで…。私、何か光くんに嫌なことしちゃったかな…」
ここまでくると泣きそうになってくる。
足は血がたれて赤い。
「付き合ってまだ2日目なのに別れるのは嫌だよ…」
何か後ろから音がする。
「光くん！？」
後ろを振り向くと、そこには、大きな犬が居た。まるでドラマみたいな展開だなとか一瞬冷静に思いながら、ハッとするとこちらに向かってじりじり歩いてきてるようだ。
きっと私の持っているパンがこの目の前の犬のお目当てなんだろう。
「待って…。私、犬、無理なの…！！」
そう言っても言葉が犬に伝わるわけもなく、じりじり近づいてくる。
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あいらいす(プロフ) - コメント失礼します！わたしはみつる推しなのですが、なかなかメインのモノがなく…こちらやっと見つけて読ませていただいたのですがとてもキュンキュンしました(*´-`*)めちゃくちゃ感動してます…！続き楽しみにしてます！頑張ってください☆ (2016年5月7日 23時) (
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作者名：柚日 | 作成日時：2016年4月23日 0時
