囲われたミツと花【前編】

27 K ページ27

「玉ちゃん！今日は、タピオカを買ってきた！ニュースで見たけどトレンドなんだろ？」
「あー。そう見たいだね。俺も見たわ。」
「二つは持てなかったから、二人で飲も？」
「うん。そうしよ、ありがとう」



玉ちゃんは、いつもお散歩の時、何かあったら危ないからと1,000円を持たせてくれてる。
欲しいものがあれば、給料から引くから、その額で足りるものなら買っていいと言ってくれて、俺はこの歳で改めて『買い物 』を覚えた。自分が働いたお金で買うという事は、こんなにも優越感があるものだと知った。罪悪感じゃない。




太輔の好きなミルクティー。
自然と、メニューを見る視線はそこへと移ってしまう。



「ストロー大きいんだな」



テレビだけじゃ、分からない情報が自分自身体験する事によって分かる。
テレビはタピオカの丸いのは映すけど、ストローの穴の大きさまでは映さない。


この丸い物体が入るんだから、大きいのは当たり前なのに、こんな当たり前な事にも感心してしまう。




「ミツ、飲ませて？」
「んー、」
「やだ、口移しがいい」
「え………、」
「ミツ」
「わかったよ、」



玉ちゃんとは、キスをする関係になっていた。
あんこの報酬として、頬にキスをしてから
何かと求められ、俺は…
拒む事ができなかった。



ストローを吸えば、ミルクティーの甘さが口の中に広がる。そして、丸いモチモチとした物体が、ストローの空洞をするりと通り、舌の上へと乗っかったのが分かった。
そのミルクティーが入ったプラスチックのカップを、デスクの上へ置き、先生用の椅子に腰掛けて、顔を上げ待つその隙間の開いた唇に重ねた。玉ちゃんを見下ろす体勢となる。ぬるりと、舌先を乗せ…ミルクティーとタピオカを玉ちゃんの口内へと注ぐように送りこんだ。




全て口内から移ったので、唇を離そうとすると、いつの間にか後頭部を押さえつけられていた。



「……んっ、は、」


苦しいぐらい、絡め取られる。
甘さで、脳が痺れそうになる。
酸素が吸えない。


息を吸うのと同時に、玉ちゃんが離れ、
チューが終わる。



「…甘い。」
「そりゃ、ミルクティーだもん」
「違う、ミツのキスだから甘いの」




まるで、俺がストローだ。
ミルクティーやタピオカの仲介の道具。



「ミツ、サウナに行くこと絶対に彼氏にバレちゃダメだよ」
「…分かってる」



色々言わなきゃいけないと、分かっていながら
言えずにいる。



太輔も喜んでくれるはずだと分かってるのに…

28 K→←26 K

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す