囲われたミツと花【前編】

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「…紅く色付くミツを早く見たい」
「…あー！玉ちゃん！散歩の時間だ！行ってくるね」
「うん、気をつけるんだよ」



玉ちゃんが何を言ったのかは聞き取れなかったけど、ふと目に入った時計が指していた時間にハッとする。もうすぐおやつの時間だから、散歩に行かなければならないことを思い出し、小さな部屋で休んでた子達の元へと行き、2匹に首輪とリードを付けた。



「今日も、一つ何か見つけておいで？」
「うん！昨日は、居眠り婆さんが爺さんだった発見があったもんね！」



毎日何でもいいから見つけるように心掛けて周りを見渡してみな、と言われていた。
そう言われてからは、周りを警戒するだけでなく何となく浮き足立つような気持ちで景色や人を見れるようになっていた。
公園には、散歩途中の老人や小さな子をベビーカーに乗せてる女性。油絵を描いてる若者や、疲れきった顔をしているサラリーマンだっていた。



近くに行かなければ、男性も怖くなくなっていた。
慣れるって凄い、引きこもっていた日々を後悔する程の日常がここには、あった。



それに、玉ちゃんに教えてもらって洗濯機も回せるようになった。以前回した時に壊れた理由が、教えて貰った時に分かった。
明らかに洗剤の量と入れた服の多さが原因だった。



今は、病院で使うタオルを洗濯して干す係も与えてもらってる。
汚れていたタオルが真っ白になってふわふわに蘇るところを目の当たりした時は、テンション上がった。
自分でやると言うことはこんなにも素敵な事なんだと改めて気付かされる。



同時に全てを太輔に委ねてしまっていた事を申し訳なく思った。
太輔に、洗濯をしてあげよう。
白いふわふわなタオルに顔を埋めながら思っていたのに、その夜、洗濯機を回した俺に、太輔はまた不機嫌になった。



「…何もしなくていいって言ったろ」



壊してないのに。
してあげたい、と思う事は悪いことなのだろうか。
回し終えた洗濯物は太輔が結局干していた。



「宏光は、何もしなくていい。居てくれるだけで」



居てくれるだけ、
今まで思ってなかったけど
それって、あんこと一緒じゃん。
太輔にとって、俺はペットと一緒なのかもしれない。



そんな風に思い始めていた。



「タピオカだ！」



公園に一台移動販売車が来ていた。
その列は、女性で賑わっていた。
新しいものとは反対に風船を使い大道芸を練習してる人は、今日も木陰の特等席を陣取っていた。

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