囲われたミツと花【前編】

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「その首輪、あんこちゃん気に入ってるみたいだね」
「あーそうなの。ありがとな！玉ちゃん」


玉ちゃんには、敬語を使うなと言われてる。
これも人に慣れるためだと。
加えて、玉ちゃん以外の人や、皆の前では玉ちゃんにも敬語を使うことも教えられた。
メリハリをつけ、「社会構造」に慣れるためにも必要だそうだ。


赤色の首輪は紛失したら困るからとあんこに虫除け機能もついてる黄色の首輪をプレゼントしてくれた。
あんこはそれを気に入ったみたいで、玉ちゃんからの提案もあり、来る時は首輪は付けず抱っこをして、病院に着いたら黄色の首輪を付けることにした。



あんこの首には、今日も黄色の輪っかが輝いてる。



「今日は、少し冷えるね。こんな日はサウナに行きたくなるわ」
「サウナって、銭湯とかにあるやつ？」
「うん。サウナがメインな所も今多いんだ。よく行くよ〜。頭スッキリするし」
「へえ、…楽しそう」
「一緒に行く？昼間なら、若い子居ないし。俺がいつも行く所、居ても初老のおじいちゃんだから。」
「…気になる。俺…結構、風呂好きなんだ」
「木曜日行こう！」
「いいの？！」
「サウナ出た後の冷水風呂に脳天やられるよ」
「…楽しみだわ〜！」



木曜日は休診日。
玉ちゃんは、本当に色んな事を教えてくれる。
今もサウナを教えてくれた。
見せてもらった雑誌に載っていたサウナは、中学の時に入ったサウナのイメージとは違った。
もっと狭くて熱くて、何も無い砂漠のような所だと思っていたけど、雑誌に載ってる所はまるでテーマパークだ。



「行く予定の所は、こんな感じじゃないけどね」



玉ちゃんは、念の為言っとくけど期待外れとか言わないでよ？、と苦笑いをした。
主が居るらしい。主ってなんだ？



「…あ、でも....」



サウナに行くと言うことは、裸になるということだ。診療中は、玉ちゃんが貸してくれたタートルネックを着ている。太輔が選ぶ服は、襟なしが多く首元がハッキリ分かるものばかりだった。
そうすると、太輔が付けた痕が丸見えになる。



出勤した時、玉ちゃんはタートルネックを貸してくれるようになった。薄手のものを。



首元を思わず指先で触ると、玉ちゃんはその指先をぎゅっと掴み、首を振った。



「大丈夫。タオルで隠せばいいよ。それに熱くて身体も真っ赤になるから、安心して？」



言わなくても、疑問に思っていたり悩んだりした事を察して教えてくれる。
動物たちだけでなく、俺にとっても先生になっていた。

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