【おそ松さん】兄弟なんだし女の趣味位被るだろ｡【全松】

末弟の虚構 ページ33

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「…………駄目だ」





女の子からのメッセージを小気味良い音と共に表示する
ディスプレイを見ながら思わずそんなことを呟いた｡






────最近､女の子と上手く会話ができない｡





*




上手く会話が出来なくなった原因は分かっている｡Aちゃんだ｡
理由は至極簡単なことで､Aちゃんが気の利きすぎる子だから｡

紹介された子とやりとりをしているとふとした瞬間に感じてしまう｡
ああ､Aちゃんならこういう時こう返してくれるのに､と｡


そもそもAちゃんにはもう既に家での僕を見せているのだから取り繕う必要も無いし､
どうこうなりたい気持ちもないから無理に奢る必要も無い｡


つまりは､楽だった｡


だってAちゃんの前だったら自然体の僕でいられる｡


褒めて欲しいとこは褒めてくれる｡気付いて欲しいとこは気付いてくれる｡
そんなAちゃんの側にいることは単純に居心地が良かった｡


普段は女の子の話を一方的に聞く僕が､Aちゃんの前では自分の話をする｡

本来ならクソつまんないであろう
僕の趣味やバイト先の愚痴でもAちゃんはにこにこ聞いてくれる｡


ああ､うん､もう､



「……なんか､今は彼女とかいいや」





Aちゃんのことを考えていたら
女作ろうとか､童貞卒業とかどうこう考えてた自分がどうでもよくなった｡


折角Aちゃんから女の子紹介して貰ったけど､なんか｡うん｡



今は取り繕って作る彼女よりも､自然体でいれる女友達だなあって｡


────結局僕もAちゃんに逃げてしまう｡
初めてのデートの後も何度かAちゃんと遊びに行った｡
冗談とか言いあえて､ご飯とかも安いとこで割り勘出来て､一緒にバイト先の愚痴とか言い合って｡


ああ､だめだなあ僕｡これじゃあ兄さん達と一緒だよ｡
早く彼女作って､底辺から卒業して､ついでに童貞も卒業しなきゃいけないのになあ｡



頭の中ではそう思っている｡思っているのに｡





『Aちゃん､今週の土曜なんだけど､ | 』





────結局僕は今日も大好きな女友達を､Aちゃんを誘ってしまうのだ｡




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