【文スト】この世界と獣と魔女【BEAST】

チェスの盤上で ページ22

思い出せ、今まで鳴った銃弾の回数を。
連続して鳴った銃声は何回だった？



『一回、三回、五回、あと…九回』



思い出せ、銃声の後、弾が飛んでいく方向は？
思い出せ、私なら出来る、私なら思い出せる。
飛び交う銃弾と、方角を。



『例えば、この部屋を一つの盤上と見たとして』



床の模様を、盤上に見立てて。



『一回銃声が鳴った時は、方角は縦横どちらかに銃声が放たれた。
三回銃声が鳴った時は、二つパターンがあった。
銃弾が突然曲がる時と、床の模様を半分にするように斜めに放たれる時があった』



適当な攻撃の中に見える、規則性。



『五回鳴った時は、縦横どれかの方向に弾が。
そして…九回鳴った時は縦横、斜め、ランダムに銃弾が飛んできた』



一回、三回、五回、九回の銃声。
色が分けられた床。
そして、まるで"ゲームのようなこの規則性"。



「ッ！！」



それを理解した瞬間、体は暗闇を駆け抜けていた。
仮説が間違いなら死ぬかもしれない、でも。



「私は、"私"を信じる！！」



滑り込むように、地面に伏せる。
次の瞬間、斜め横から、銃弾が飛んできた。



「！！」



廃工場の様子を音楽に、林檎を齧っていた少女の手から赤い果実が落ちる。



「まさかあの子…気づいたのですか…？」



重力に従って落ちていく林檎を気にも止めず、
少女は、魔女は驚愕と狂喜に歪む口元で笑った。



「ふふ、ふふふ！
まさかまさかまさか！気づいてしまうなんて！！」



ほんのお遊びのつもりだった。
盤上で踊ってもらう為のお遊び。
しかし、あの少女は見破ったらしい。



「ふふふ…！なんて素敵なことでしょう！」



少女は笑う、自分の予想を覆した少女を。
そして、これから起こる未来を予知して。



パァン！！パァン！！パァン！！



『次は右！！』



銃弾を避けながら、バルブを緩めていく。
この攻撃は出鱈目では無く、ちゃんと規則性があったのだ。



『この攻撃は全て、チェスの動きを再現している！！』



床を見るまで想像すらしなかった。
この部屋の床は、チェスの盤に似ているのだ。
だが誰も思わないだろう。
まさか、飛んでくる銃弾の数とその方向が、チェスの盤上に見立てて行われたものだなんて。



「本当、ふざけてるよ！」



私は、私だけは踊ってやるつもりなんて無い。

私は駒にはならない→←規則性とは

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