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憤怒の色 ページ49

芥川がポートマフィアの刺客に襲撃に遭い、瀕死の重傷を負った。
与謝野の治療を終え、目が覚めるのを待つ間、Aはある一室に呼ばれる。
そこには国木田が一人、いた。



「芥川が起きる前に、お前に見せておこうと思ってな」



壁面の映写幕にある映像が流される。
海の上には浮かぶ小さな船の映像だった。



「これは…」



「四年前に起きたある事件でポートマフィアと異能特務課の長が開いた非公開の会合だ」



特殊な方法で撮影された映像。
そこには、三人の男が映っている。
一人は丸眼鏡をかけた青年、
一人は和服をきた禿頭の壮年、そしてもう一人は。



『うちの報告書を待っとる内務省の官僚共にもひとつ、
手土産を持って帰ってやりましょうかな。
…お宅の首など持ち帰ったら喜ばれるやろなぁ』



「…嘘だ」



「A?」



どうして?



『とんでもない』



映像から流れる声を信じたくない。
黒衣を纏った、若い青年の姿もなにもかも。



『私程度の首なんて、持ち帰っても臭うばかりで誰にも喜ばれませんよ』



握りしめた爪が掌に刺さる。



「この人の名前は」



「ポートマフィア首領、太宰治だ」



国木田の返答に、Aはなにも云わずに静かに立ち上がった。
そして、映写幕を強引に引っ張り、床に落とした。



「おい、いきなりなにを…!」



そう云った国木田は言葉を途切れさせた。
恐怖を感じたからだ。
長い黒髪からのぞくAの、おぞましい顔に。



「…そう、そうなんだ…」



憤怒。
その一色に染まった少女は、静かに部屋から出ていく。
誰も見たことがない、怒りに狂った人間の姿だった。



「A」



Aの名前を呼ぶ、見たことのない銀髪の男性。
話では聞いていた、彼が福沢社長なのだろう。
だが今は関係ない。



「少し、出かけて来ます」



この怒りを、何処にやれば良いのだろう。
頭も体もなにもかも熱い。
なのに悔しくて仕方ない。



「行ってはならない」



福沢はそれでも止める。
他方もない怒りに震える少女は、かつての友人によく似ている。
だが、彼女ですらこんなにも。



「自分を見失うな」



美しい顔の下に、獣の気配を感じた。
Aは福沢の言葉には答えず、社から出ていく。
その姿は、怒りに震える獣であった。

もう戻れない場所→←響く崩壊の音



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もこすけ(プロフ) - ちょこれーとさん» コメントありがとうございます。続編が出ましたので、そちらも宜しくお願いします。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年11月9日 21時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 今日めっちゃ更新多くて嬉しいです!!! (2019年11月9日 20時) (レス) id: adc186f0a4 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - azukiさん» コメントありがとうございます。一回目、そして二回目は…。今後の展開にご期待ください。読んでくださりありがとうございました。 (2019年11月4日 10時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
azuki(プロフ) - 本当の笑顔…今回が一回目で、二回目は……あー!この後の展開が楽しみすぎます!これからも頑張ってください! (2019年11月4日 8時) (レス) id: 2de50b2480 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - にゃんこさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます。そんな風に言ってもらえて嬉しいです。今後も頑張る力が出ました。これからも応援よろしくお願いします。 (2019年11月3日 9時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年10月14日 18時

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