検索窓
今日:44 hit、昨日:3 hit、合計:131,131 hit

何が似ているのか ページ44

すっかり日も暮れた頃、芥川にしごかれた幸介が半泣きになりながら帰ってきたので、
子供にやりすぎだと明日投げ飛ばしてやろうと決意した。



「すまないな、子供達の世話を頼んで」



出張から帰ってきた織田は、開口一番にそう云う。
子供達が住む長屋近くの公園のベンチに腰掛け、ため息をついた。



「今後は、仕事の内容を教えてから頼んでくださると助かります」



「悪い」



嫌味にも織田は顔色一つ変えない。
相変わらず読めない人だな、とAは肩を竦めた。



「子供達の勉強を見てやったとか」



「これくらいしか教えられませんから」



「難しい問題も解けるようになっていた、教師に向いてるんじゃないか?」



「知識は裏切りません、今後武器になる」



この街で平和に生きていくなら、銃の扱いや剣の振り方よりも、
学を身につけて安定した職に就く方が良い。
知識は武器になり、今後も彼らを助けてくれるだろう。



「みんな、良い子達ですね」



「あぁ」



「賢い子、きっといい大人になる」



子供は守られるべき存在。
そんな子供達が大人になり、次は他の子供を守るのだと思うと、
その役目を僅かながら請け負っている自分が誇らしい。



「今なら父が何故私に知識を与えたのか判る気がします」



「父親は…」



「故人です」



胸に湧くあの日の後悔と表現できない嫌悪。
それ以上話を広げる気がないAは、ベンチから立ち上がる。
ふと、公園にいる名も知らない子供に目を向ける。
親が子供の手を引いて家に帰る光景が、酷く羨ましく思えた。



「お前はどこか芥川に似てるな」



「…はい?」



アイツに似てる?
織田の云っている意味が判らず、顔をしかめた。



「多分、お前達は互いに似ているんだろう」



織田は淡々と答え、立ち上がる。
問い詰めて聞き出したいが、うまくはぐらかされる気がするので、止めなかった。



「じゃあ、また子供達の世話を頼む」



「…今度は事前に予告してくださいよ」



「判った」



砂色のコートを翻し、織田は公園から立ち去っていく。
Aも帰る為に、反対方向に歩いて行った。



「忘れないで」



そしてまた、あの夢を見る。
毎晩毎晩繰り返される夢。



「ねぇ、お願い」



耳元で声が聞こえる気がした。



「思い出してよ」

白雪姫が食べた毒林檎→←父の言葉と子ども達



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (192 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
284人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

もこすけ(プロフ) - ちょこれーとさん» コメントありがとうございます。続編が出ましたので、そちらも宜しくお願いします。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年11月9日 21時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 今日めっちゃ更新多くて嬉しいです!!! (2019年11月9日 20時) (レス) id: adc186f0a4 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - azukiさん» コメントありがとうございます。一回目、そして二回目は…。今後の展開にご期待ください。読んでくださりありがとうございました。 (2019年11月4日 10時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
azuki(プロフ) - 本当の笑顔…今回が一回目で、二回目は……あー!この後の展開が楽しみすぎます!これからも頑張ってください! (2019年11月4日 8時) (レス) id: 2de50b2480 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - にゃんこさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます。そんな風に言ってもらえて嬉しいです。今後も頑張る力が出ました。これからも応援よろしくお願いします。 (2019年11月3日 9時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:もこすけ | 作成日時:2019年10月14日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。