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繋いだ手はいつまでも ページ42

朝、早い時間帯から津島とお茶をした数時間が。
織田から頼まれた子どものうち、一人の少女の授業参観にAと芥川は参加していた。



「隣の人達…どの子の親?」



「ものすごい先生を睨んでるわ」



「大丈夫?眼力が完全に殺し屋だけど…」



教室の後ろに立つ親達の視線を一身に浴びている二人の親。
一人は感情が見えない黒い眼球で生徒達を見つめている男。
一人は美人だが威圧感があり、親達ですら道を開けてしまう女。



「貴様の顔がキツいせいだな」



「莫迦云うな、お前のせいだ」



流石にセーラー服で行く訳にはいかなかったAは、
与謝野から借りたビジネススーツとヒールのおかげでとても十八の小娘には見えない。



「はい、それじゃあこの漢字が読める人」



教師が黒板に漢字を書きながら、生徒達に聞く。
親達が見ている中、手を上げづらいのか誰の手も上がらない。



「咲楽は何故手を上げぬ、あの程度の問題判る筈だ」



「恥ずかしいからに決まってるだろう。
それくらい察してやれ…ってなにしてる」



Aが止めるより早く、芥川の外套がスルスルと授業を受ける咲楽の元へ伸びる。
そして咲楽の手を持ち上げ、彼女の戸惑いなど知らず、教師が指名をした。



「あ…えと、あの…はい、その…『いえ』、です…」



もじもじと恥ずかしがりながらも、咲楽はしっかりと答えた。
保護者達から感嘆の声が漏れ、咲楽の手を持ち上げていた羅生門がスルスルと外套に戻る。



「どうだ」



何処か自慢げな芥川に、Aは深いため息をついた。
この男はなんでも異能で解決したがるなぁ、と。



「あの、すみません咲楽ちゃんのお母様ですか?」



帰り際、咲楽のクラスの担任にそう呼び止められたAは、己の表情筋が死んでいくのを感じた。



「………そうですがなにか?」



オロオロしている咲楽の手前、Aは精一杯の愛想笑いを浮かべた。
例え芥川が咲楽の兄と思われていようと、
例え自分が芥川より歳上にみられていようと、
例え十八歳の自分が咲楽の母親に見えていようとも。
帰り際、咲楽はもじもじしながらAの近くに駆け寄る。



「あの、その…ありがとう」



咲楽はそういって嬉しそうにはにかんだ。



「…うん」



他の親がしているように、子供と手を繋いで帰る。
芥川が随分渋ったが、なんとか説き伏せて。
赤く染まる夕暮れ、咲楽に強請られて繋いだ手は随分温かい気がした。

父の言葉と子ども達→←他愛もない会話の中で



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もこすけ(プロフ) - ちょこれーとさん» コメントありがとうございます。続編が出ましたので、そちらも宜しくお願いします。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年11月9日 21時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 今日めっちゃ更新多くて嬉しいです!!! (2019年11月9日 20時) (レス) id: adc186f0a4 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - azukiさん» コメントありがとうございます。一回目、そして二回目は…。今後の展開にご期待ください。読んでくださりありがとうございました。 (2019年11月4日 10時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
azuki(プロフ) - 本当の笑顔…今回が一回目で、二回目は……あー!この後の展開が楽しみすぎます!これからも頑張ってください! (2019年11月4日 8時) (レス) id: 2de50b2480 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - にゃんこさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます。そんな風に言ってもらえて嬉しいです。今後も頑張る力が出ました。これからも応援よろしくお願いします。 (2019年11月3日 9時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年10月14日 18時

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