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知らないはずの己の異能力 ページ5

黒い刃が、まるで壁に当たったかのように止まる。
どうしてか、私はその使い方を知っていた。



「『羅生門、主人を拘束しろ』」



その瞬間、黒い刃は柔らかな縄のように変化し、
意識があるのかも判らない青年を拘束し、動きを止めた。
青年が倒れて、漸く自分が息を止めていたことに気づいた。



「ッ、ハァ、ハァ…」



ドクンドクンと心臓が響くように鳴る。
なんだ、なんだ今のは。


『羅生門?なぜあの刃が止まった?なぜ私は…』


あれを、操れた?
疑問は尽きない、汗が頬を伝い、地面に落ちた。



「おい」



肩に手が触れ、跳ねるように体を揺らす。
真っ青な顔で振り向いたAは、その時漸く、今が夕方なのだと気づいた。
空が、真っ赤に染まっていた。


「驚いたな、異能者だったのか」


「異能者…わ、たしが…?」



「…気づいていなかったのか」



織田は倒れた青年を一瞥してから、震えるAの背中に触れた。
そして、子どもをあやすように撫でる。



「大丈夫、大丈夫だ。ゆっくり深呼吸をしろ」



織田に云われるまま、ゆっくり息を吸い、吐く。
怖い、怖い、自分の知らないものが怖い。
震える指先で口を押さえて、呼吸をする。



「…ありがとうございます、落ち着きました」



「そうか、良かった」



織田は一瞬考えるように腕組みをしたのち、Aの目の前にしゃがんだ。


「俺の職場に来るか」



「え…」



「俺の職場は、この街の昼と夜、その境を取り仕切る異能組織だ」



普段なら胡散臭い、そんなのあり得ないと一蹴する話も、
実際に見た後ではやはり違った。



「武装探偵社…俺はそこに勤めている」



その名前は、ストンと胸に落ちた。
聞き覚えのあるような、それでいて懐かしいような名前。



「そこに来ないか?」



差し出された手を、気づいた時には握っていた。
自由になれるかもしれないのに、
何故か"その場所"に求めるものがあるかもしれないと思ったから。



「よろしく、お願いします」



歯車が、動き出す。
大切なものが抜け落ちたことに気づかぬまま、ゆっくりと。



「…ところで、この青年を運びたいんだが」



「…」



「これは解除できるものか?」



「…」



「…そのまま運ぶか」



「…通報ものだ…」



青年を簀巻きのまま運んだせいで、四回職質を受けた。

新人二人の入社試験騒動→←織田という男の力



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もこすけ(プロフ) - ちょこれーとさん» コメントありがとうございます。続編が出ましたので、そちらも宜しくお願いします。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年11月9日 21時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 今日めっちゃ更新多くて嬉しいです!!! (2019年11月9日 20時) (レス) id: adc186f0a4 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - azukiさん» コメントありがとうございます。一回目、そして二回目は…。今後の展開にご期待ください。読んでくださりありがとうございました。 (2019年11月4日 10時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
azuki(プロフ) - 本当の笑顔…今回が一回目で、二回目は……あー!この後の展開が楽しみすぎます!これからも頑張ってください! (2019年11月4日 8時) (レス) id: 2de50b2480 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - にゃんこさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます。そんな風に言ってもらえて嬉しいです。今後も頑張る力が出ました。これからも応援よろしくお願いします。 (2019年11月3日 9時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年10月14日 18時

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