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二百三十三話 [違和感はなにを意味する] ページ35

肌に触れた違和感に立ち止まっていると与謝野に腕を引かれて壁際に体を隠された。



「探偵社なんか撃っちまおうぜ!」



どうやら立原は、与謝野達が首領である森の指示を無視して抜け出したことに腹を立てているらしい。



『気のせい、か』



興奮気味の立原に、広津が静かに云う。
マフィアの行動は舐められたか否かではなく、首領の意思に沿うか否かで決まる、と。



「誰にも探偵社を傷つけさせるな、命に代えても護れ。
それが我々への命令だ。
つまり首領は探偵社が指示を無視し危険な取引に向かうと判っていた」



そう云いきると、広津の目がこちらを向いた。



「そう云う訳だ、探偵社の諸君」



気づかれていた。
隠れる必要が無くなり、与謝野は「まったく、心配性だね、森医師も」と云いながら広津の方へ向かう。
その時、フードを被ったAの存在に一瞬空気が張り詰めたが、
行方不明だったAだと判るとそれは消えた。



「心配せずともフィッツジェラルドとの取引は罠じゃないさ」



「ほう、その根拠は?」



「敦が信じたから」



与謝野は、ハッキリと云いきった。
凛とした、彼女らしい声だった。



「敦は以前、白鯨で奴と死闘を繰り広げた。
魂を曝して命の交換をした相手に嘘はそうそう通用しないモンさ」



その言葉に反論は無い。
A自身、彼と会って嘘は見えなかった。
だから、もしこの先なにがあればそれはきっと…。
その時、Aは自分を驚きの色で見つめる存在に気づいた。
立原が、まるで何故ここにいるとでも云うように自分を見つめていたのだ。



『なに、今の』



どうして、あんな目を。
Aも立原を見つめると、彼は自然に気づいて目をそらした。
一瞬、一瞬の間だったのに嫌な予感がする。
その時、



「車が来ました!」



賢治の声にハッとした。
確かに、道の真ん中に車が止まっていた。
立原に気を取られ、気づかなかった。
車種も、番号も同じ、敦達が乗っているであろう車が。



「待ってましたよ!敦さん!」



Aは遠目で、車のある部分を確認する。
瞬間、血の気が引く。



「違う賢治!それじゃない!!」



車につけた、傷が無かった。
罠だと叫ぶが既に遅く、賢治は車の扉を開いていた。
瞬間、凄まじい爆音と共に車が爆発した。



『ッ、まさか』



嫌な予感が、的中した。

二百三十四話 [翅無き身の悲しきかな]→←二百三十二話 [仲間との合流]



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riia - こんなに長いお話は初めてみるので尊敬します!他の夢小説よりちゃんとしていてすごく面白いです!神作だと思います!大好きです!登場人物の性格もちゃんと掴めていて見ていて楽しいです!ほんとに文ストの中に居そうで違和感がありません!設定とか凄いと思います!! (2022年8月5日 16時) (レス) @page24 id: 9d716aa4c8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - †三毛猫†さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。泣いていただけたようで、書いているこちらとしてはとてもありがたい事です。とても嬉しいです。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年5月19日 12時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
†三毛猫†(プロフ) - 毎回、夢主ちゃんの過去のお話しで泣いてしまいます。こんなに感動できる物語がかける作者さんを尊敬してます (2019年5月18日 19時) (レス) id: a139b9767e (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - さくらかつきのようになりたい←さん» コメントありがとうございます。そんなに喜んでいただけるとこちらとしても書いていてよかったと思います。近々、第7章を出しますのでよろしければ読んでください。皆様の応援、大変嬉しいです。今後とも、この作品をよろしくお願いします。 (2019年5月18日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
さくらかつきのようになりたい← - BEASTも楽しみにしてます!小泉ちゃんがどう活躍(?)するのか…アッダメだ私の脳じゃ思い付かない…!!(←)コホン…体調にも気を付けて、作者さんのペースで更新して下さい!(← 何か上からで済みません…!!)我々読者は何時までも待ち続けております!!長文失礼しました! (2019年5月17日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年6月9日 19時

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