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ノサカくん ページ3

そんな私の笑顔に一瞬だけ目をくれたと思えば、彼はまたすぐに視線を逸らして言った。


「漢字は、違うけどね。」


「え…そうなの?」


確かに、乃坂の乃は珍しい字かもしれない。


ならば彼は、普通の「野坂」くんなのだろうか。
それとも私と同じように、ちょっと変わった字のノサカくんだろうか。


「じゃあ、お先に。」


私がそんな難問に考えを寄せる中、彼はそそくさと下駄箱の扉を閉じて体を左に向けた。


瀬尾くんより広くて西蔭くんより狭いその肩幅が、私の目の前から遠ざかって行く。


「あ…あの!」


この時、どうして私が咄嗟に声をかけたのか
理由は分からない。

ただ、あの朝にも感じたのと同じ違和感が100%を超えて
体が勝手に動き出したのだということだけは、分かった。


「…何?」


彼の後ろ姿が立ち止まった。
振り向いたり体の向きを変えたりすることなく、その声だけがこちら側に飛んでくる。


_________私たち、いつかどこかで。


そう言いかけた口が、思ったようには動かなくて


「か…傘、ありがとう。」


代わりに私はそう言った。


思ったことも、感じたことも上手くは言い出せないような
不思議な呪いにかけられたような気分だった。


のさかくん、ノサカくん。


ノサカユウマくん。


西蔭くんに似て、あまり喋らない人かもしれない。


とりあえず
隣のクラスの知り合い、第二号だ。


「乃坂さん。あの…よかったら、お昼一緒に食べない?」


その日の昼休み、ドアから顔を出してそう声をかけてきたのは
もうすっかりお馴染みの瀬尾くんだった。


「うん、いいよ。丁度ね、いつも一緒に食べてた子が今日は委員会で、一人で食べようとしてたところだったの。」


「はは、俺も。どこで食べる?」


彼の食事は、いつも購買のパンだった。


コロッケパンと、ピザパンもしくは焼きそばパン。

そしていつものコーヒー牛乳。


彼曰く、これは入学当初からの研究の成果で、300円以下に収められる購買の組み合わせの中で最もお腹が膨れる優勝コンビらしい。


金曜日だけ出現するクリームパンは、一週間頑張った自分へのご褒美のようだ。


「…あ。」


彼はコロッケパンを両手に持ちながら、言った。


「雨だ。」


その言葉に窓の外を向くと
昼間とは思えないどんよりとした曇り空から
確かにポツリポツリと、水滴が降ってきていた。

妙な緊張感→←はじめまして



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橋本アリィちゃん(プロフ) - とても泣けました!こんな感動作品を作って頂きありがとございました!今後とも応援しています!(*´ω`*) (2021年11月4日 7時) (レス) @page39 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
くゆぃ - この物語を生み出してくれてありがとうございます。余命あと1年で、辛くて仕方なかった時、まさに今、イナズマイレブンに出会って、野坂悠馬君が好きになって、あなたの小説を読ませていただきました。いなくなる前に、この小説を読めてよかった。よかった。ありがとう (2021年8月6日 23時) (レス) id: 47b282db84 (このIDを非表示/違反報告)
むい - ほんっとうにこの作品が大好きです!何度も泣かせていただきました。この小説が、命について深く考えるきっかけとなりました。最後に、本当に大好きです。ありがとうございました! (2020年9月7日 14時) (レス) id: b5b9338b39 (このIDを非表示/違反報告)
ふるる。(プロフ) - 初コメ失礼します、ふるる。です!すっごくこの小説好きでした!命って大切だなと思ったし新しい生き方も学びました。完結おめでとうございます! (2020年4月25日 10時) (レス) id: 28f80b2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
岡部 愛(プロフ) - この作品であなたを知り、一気に最後まで読みました。しかし言葉が出てきません。とても好きで、好きだという気持ちをなんと表現したらいいか分かりません。この作品でたくさん泣きました。あなたの他の作品も是非読ませていただきます。 (2020年4月25日 8時) (レス) id: fa9bcb142e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もちまる。 | 作成日時:2020年4月4日 9時

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