はじめまして ページ2
鋭ささえ感じるにも関わらず、どこか優しい眼の彼は
改めてよく見たら顔立ちは端正で、白い肌の上に映える黒睫毛がバランスよく並んでいた。
「…これ、貸そうか。」
目線を少しも合わさずに、彼は私に一本の傘を差し出す。
私が持っている傘よりも一回り大きな、黒い傘だった。
「僕は別に折り畳みがあるし、何しろ寮だしね。」
下駄箱に革靴をしまいながらそう話す彼と、下駄箱との隙間に一瞬見えた折り畳み傘が
西蔭くんが貸してくれた傘に、よく似ていた。
「あ…あの。」
このただならぬ違和感にようやく突き動かされて、得意なはずの友達づくりが
やや滞ったままスタートする。
「はじ…め、まして。」
「……うん。」
「た…確か隣のクラスに、いたよね？名前は？」
「本当は、」
それはあまりにも予想外で
そしてそのくせ、あまりにも自然な一言だった。
「知っているんでしょ。僕の名前。」
相変わらず、視線は合わない。
だけど私には、すぐに分かった。
彼が今、悲しそうな目をしていること。
寂しさを帯びた眼差しで、意味もなく何もない空中を見つめているということ。
「あ…うん、この間ね。誰かが名前を呼ぶのを聞いたから…。」
「あぁ、あの時か。」
だけど、その目の意味が分かっても
彼の心の中は霞がかっていて
よく、見えない。
瀬尾くんとは、まるで正反対だった。
「でも、苗字だけだよ。下の名前は？」
少しの緊張と恐れを持ちながら、私は慎重に会話を続ける。
少しでも彼を雑に揺るがしたら
彼の心はずっと見えないままのような気がしたからだ。
「悠馬。」
そんな私の心境を嘲笑うかのように、
彼はぽつりとそう言った。
「野坂悠馬だ。」
いや、違う。
これは嘲笑っているのではなくて
多分__________虚しくて、悔しい。
根拠なんて何もなかったけれど
そんな気がした。
「私は、乃坂A。はは、苗字同じだね。」
そんな彼の虚を埋めてみたくて
作った笑いを彼に提示した。
作り笑いが得意なのは、私のよくない所の一つだ。
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橋本アリィちゃん(プロフ) - とても泣けました！こんな感動作品を作って頂きありがとございました！今後とも応援しています！(*´ω｀*) (2021年11月4日 7時) (
レス) @page39 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
くゆぃ - この物語を生み出してくれてありがとうございます。余命あと1年で、辛くて仕方なかった時、まさに今、イナズマイレブンに出会って、野坂悠馬君が好きになって、あなたの小説を読ませていただきました。いなくなる前に、この小説を読めてよかった。よかった。ありがとう (2021年8月6日 23時) (レス) id: 47b282db84 (このIDを非表示/違反報告)
むい - ほんっとうにこの作品が大好きです！何度も泣かせていただきました。この小説が、命について深く考えるきっかけとなりました。最後に、本当に大好きです。ありがとうございました！ (2020年9月7日 14時) (レス) id: b5b9338b39 (このIDを非表示/違反報告)
ふるる。(プロフ) - 初コメ失礼します、ふるる。です！すっごくこの小説好きでした！命って大切だなと思ったし新しい生き方も学びました。完結おめでとうございます！ (2020年4月25日 10時) (レス) id: 28f80b2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
岡部 愛(プロフ) - この作品であなたを知り、一気に最後まで読みました。しかし言葉が出てきません。とても好きで、好きだという気持ちをなんと表現したらいいか分かりません。この作品でたくさん泣きました。あなたの他の作品も是非読ませていただきます。 (2020年4月25日 8時) (レス) id: fa9bcb142e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2020年4月4日 9時
