首領、仕事のお時間です【文スト】

お仕事です 4 ページ5

「ただいま！A」
「おかえりなさいませ」

陽も傾いてきた6時手前に、二人は帰ってきた。
首領はこれまた随分と重そうな沢山の荷物を抱えて。
それと対照的に、エリス様は満面の笑顔で身軽そうに奥の部屋に入って行く。

荷物の中身は相変わらず服だとか、そういったものだろう。
首領も全く呆れたものだ。

「大丈夫、ですか？首領…。お持ちします」
「すまないね」

今の鴎外さんの姿はとてもじゃないが横浜で有名なポートマフィアの首領とは思えない。
威厳の欠片も無く、よれた白衣を身に纏っている。

しかしそれでも。
そんな姿でも、彼は確かに威厳あるポートマフィアの首領なのだ。


「首領、中原様が先程報告書を提出にいらっしゃいましたので受け取っておきました」
「ありがとう」

此方を見てにこり、と首領が微笑む。

「いえ…」


狡い。なんて狡い人なのだろう。
私だって馬鹿ではない。
自分の気持ちに気付かないで毎日首領の傍で過ごせる程鈍感に出来てはいない。

いや、この場合は鈍感に出来ていたらどれ程幸せだったことだろうか。


そうだ。
私はこの人のことを好いているのである。

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