首領、仕事のお時間です【文スト】

お仕事です 3 ページ4

こつこつとノックの音が聴こえた。

「はい」
一言そう返事をする。

「俺だ、中原だ」
「如何かしましたか？首領は現在お出かけに｣
「報告書出しに来た。」
「…少々お待ち下さい。」


重々しいドアを開ける。
そこには何時も通り黒い帽子を被った小柄な男性が立っていた。

「よう」
「ど、どうも。ええと…報告書は私の方で出しておきます。」
「おう。頼んだ」

中原さんは、いい人だ。
私の異能について知っていて、それなのに普通に接してくれる。

中原さんだけじゃない。
ポートマフィアの人達は優しい。
それは…それは、彼らも異能力を持っているからなのだろうか。
彼らは異能を呪いだと思わないのだろうか。

呪縛だと、そう思い異能を恨むのは私だけなのだろうか？


「それじゃあな」
「あ、はい…」

「手前の事情は知ってるがよ、外にも出ねえと心が腐るぞ」


そう言ってくるりと踵を返して彼は去って行った。


腐る？


…腐る、か。


中原さんがそう言うなら、きっとそうなんだろう。
鴎外さんは差詰め防腐剤と言ったところかな。


外の世界に、エリス様のように鴎外さんと一緒に行けたら


「いいんですけどねえ」


それは浅はかな願望なのだ。

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