混沌な吸血鬼たちと (ページ25)

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お題2:僕のために笑ってよ E ページ25

『ぅ、っ…』

甘くてすごく美味しい。
できることなら全部飲み干したいくらい。
だけどそんなことしたらAが干からびちゃってこの甘い蜜を飲むことができなくなっちゃう。

Aも慣れて来たのか最初の頃より痛むような様子もなく、むしろ快感になってきちゃっている様子だった。
でもこれでいいんだ。やっとAは僕を受け入れるようになってきたんだと嬉しくなる。

僕のイブになってもらいたいってのもあるけど、それ以上の想いが強くなって僕はいつも彼女為に必死になっていっている。
僕のことを考えて欲しい、嫌いにならないでほしい、手に入れたい。
Aが僕以外に向けていたあの笑顔を…僕に向けて欲しい。

ゆっくりと口を離すとAは肩を使って大きく深呼吸している。
熱い息が僕の肩にかかって少しくすぐったく感じた。

「…ごちそうさま、A」

耳元でそっと囁いて頭を優しく撫でる。
こうするとAはビクッと反応してよりいっそ可愛くなる。
こういうことすると彼女は喜ぶんだと知っていつもそれをするようにした。
するとAはぎゅっと僕の服を掴んで、潤んだ目で見てくれる。

『…っ、明日も、飲む？』

「うん、だから後であろまにまた鉄分取れるやつ頼んどく」

『毎日私の血飲んでて飽きないの…？』

「…どうして？」

どうしてまたそういう顔するんだろう。
不安気に満ちたその顔。
僕の時だけいつもなにかを探るような顔。
どうしてAは僕の前では笑ってくれないんだろうか。

さっきまで美味しいものを堪能してたのに、考えれば考えるほど苛ついてきて僕はAの両手首を掴んで押し倒した。
Aの上に覆い被さるように跨って体重をかける。
彼女も抵抗しても無駄だと悟ってじっとしているが、その悲しいのか不安なのかわからない表情を僕に見せてくる。

「ねえ、A…なんで笑ってくれないの？」

『…え？』

こつん、と額を合わせて目を合わせて見つめる。
微かにまつ毛が当たったり、うるうると揺れ動く目。

「ねえ、僕のために笑ってよA…」

『そ、そんなこと言われても…』

「どうしたら笑ってくれるの？」

『…だ、抱きしめる、とか？』

「……」

俺はそっと顔を離して、更に体重をかけて寝たままぎゅっと抱きしめてみる。
どくどく、と彼女の鼓動が身体に感じている。

「これで笑ってくれる？」

『た、多分…』

「…なんかムカつくからもう一回飲む」

『ど、どうしてっ！？』

知らない、もっかい飲んでやる。