8滴目 ページ11
『ん、ぅ…』
ぐっすり寝てしまった。
目を開けるとさっきいた薄暗い部屋の天井。
いつのまにか掛けてあった羽毛布団。
ゆっくりと身体を起こすと見知らぬ袖。
『あれ…いつ着たの』
両手を広げたり閉じたり。裏表に返したりとまじまじと見る。
ベッドから降りると知らないうちに新しくなってる姿見。
鏡の前に立って見た。
『…わぁ』
シックな黒色でレース袖で、スカートの丈が少し短いカクテルドレス。
まるっきりお嬢様みたいな気分だ。
…にしても、一体誰が着さしたのだろう?香助がやったのだろうか。
---コンコン。
あ「お嬢様、起きていられますでしょうか」
『は、はい!』
あ「失礼致します」
ガチャと部屋の扉が開いて香助が入ってくる。
お面で目は見えないが顔が上から下へ、下から上へと動いて見て来る。
あ「…ごほん。先程は長男、絆様のご無礼なことをしてしまい、大変申し訳ございませんでした。
彼には今後、気をつけるようにと言いつけてあるのでご安心ください」
『い、いえ…。お気になさらず…』
とは言ったが、そうだ。さっき絆に手首噛まれ掛けてその後気を失ってたんだっけ…。
少し思い出してしまって若干、頭が痛くなった。
あれ、待って。あなたも怪しげなことしてた気が…。
あ「…お食事の用意が出来ましたので、リビングにお越しください。私は他のお三方をお呼び致しますので」
『あ、あの、このドレスは…』
あ「あぁ、ドレスのチョイスは絆様がお選びになられました。
着付けはA様が起きる様子なかったので私が致しました」
『…えっ?』
あ「下着のチョイスも今後、私達で決めさせていただきます。では失礼致します」
『え、ち、ちょっと!えっ!?』
え…裸見たの?男の人に初めて見られたの…?
……っ、最悪だ。恥ずかしい。もうこの部屋から出たくない。
今まで男とちゃんと話したのなんか、お父さんくらいだ。
小さい時にしかあんまり話せてなかったけども…。
にしても少しは「ごめん、身体触っちゃった」とかくらいなんか言ってよ!?
ドレス似合ってるのか聞けなかった自分が悪いけど、全然触れないし!
…でもなんも言って来ないってことはそこまで魅力なかったてこと?
あれ、自分で言っててショックになる。
『…行かないとまたなにされるかわからない』
はぁーあとため息ついて渋々と私はリビングへと向かった。
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作者名:もちぷよ | 作成日時:2023年1月1日 22時