呪言師の葛藤【呪術廻戦】 (ページ11)

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「Aー、まだ寝てんのか？そろそろ起きねぇと遅刻すん…ぞ………」

パチパチと瞬きを繰り返す禪院。

禪院はいつも通り花宮を迎えに来たのだが、眠っている花宮の傍に狗巻がいるという謎の光景に一瞬言葉を失った。

また、狗巻もまさかこのタイミングで禪院が入ってくるとは思わず、驚きのあまり固まってしまっている。

「……おい棘ぇ、Aの寝込みを襲いにくるとはいい度胸してんじゃねーか」

「おっ、おかか！！おかか！！！」

「あ？じゃあその手はなんだよ」

禪院の視線の先には、花宮の前髪をのけてあげようとして近づけていた手。

禪院からして見れば、そのまま頬に添えてキスでもするのではという風に見える。

「おかか！！明太子！！」

「おら、歯ぁ食いしばれ棘」

必死に弁解しようとする狗巻には目もくれず、ズカズカと近づいていく禪院。

狗巻はこのまま殴られる訳にもいかないので、呪言を使うか否か思考をフル活動させていると、すぐ側から「ん……」という声が聞こえた。

花宮である。

「ん、あれ…………？」

少しの間意識を飛ばしていた花宮。

目を開けると、何故か自分の部屋に狗巻と禪院がいて、しかもその禪院に狗巻が殴られそうになっているという光景に理解が追いつかなかった。

「え、え！？なんでいるの……？

私、真希ちゃんに学校休むって連絡したけど……」

全く身に覚えがない禪院は、今一度自分のスマホを確認する。

しかし何の通知も入っておらず、眉間に皺を寄せた。

「おい、なんも聞いてねぇぞ」

「すじこすじこ」

狗巻は右手で自分を指さし、左手でスマホの着信履歴を禪院に見せる。

「あー……なるほどな。

A、お前間違って棘に電話掛けただろ」

「あれ…？そうだったの……？」

「しゃけ」

「そっか…ごめんね、棘くん。」

申し訳なさそうに布団をぎゅっと握りしめる花宮。

花宮の仕草一つ一つに心を揺らされる狗巻。

「で、心配で見に来たって訳か……

悪かったな、棘。」

「こんぶ」

「ありがとうね

あと、もうちょっとで学校始まっちゃうけど……」

そう言って壁に掛けてある時計を指さす花宮。
時刻はチャイムの8分前をさしていた。