＿episode21 ページ24
＿side.春峰 紫恩
『ここはそういう場所だから』
目の前の少年から告げられた言葉。
だって、私に人を殺すなんてできない。
でも、誰かに殺される覚悟だってない。
『早く慣れた方がいい』
慣れられるわけがないじゃない。
ここは誰かを殺さないといけない場所。
そして、平然と誰かが死ぬ場所なんだから。
そんな言い訳が、叫びが喉の奥に沸いて出るが、ぐっとこらえる。
さとちゃんだって、よかれと思っていったのだろうから。
紫恩「……そうね。どうもありがとう」
うまく、笑えていただろうか。
覚悟してきたつもりだった。
でも、覚悟は足りていなかった。
ただ、それだけなのだろう。
じゃあ、この子はどうだろうか。
少なくとも私よりはこの状況を理解している、気がする。
ただどこか他人事で、どうでもいいという無気力さを感じた。
それは自身の死すら重要視しておらず、つかみどころがないように思えた。
さとちゃんは何かと手持無沙汰な様子だが、怪我が不安なのでまだ休むように言った。
その時は「それは命令？」とは聞いてこなかった。
しかし、なんだかそわそわしている。どうやら落ち着かないようだ。
紫恩「もっと楽にしていいのよ」
と声をかけると、今の今まで変わらなかった表情が少し困ったようになった。
さと「だって、そんな命令、されたことない……」
と呟くさとちゃん。私の言ったことを命令と見ていたのか、と少し悲しくなる。
紫恩「暇なら私とちょっと話さない？」
さと「……何を、話すの？」
少し食いついたようで、こてんと首を傾げる彼。
紫恩「そうね……じゃあ、私の昔の話、聞いてくれない？」
面白い話じゃないけどね、と笑って付け足す。
「わかった」と、端的に回答をしたさとちゃんは、先ほどと変わらず無気力だが、話を聞く気はある様子だった。
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作者名：葉月/月のツッキー/陰鸚 x他3人 | 作者ホームページ：No.
作成日時：2022年6月9日 19時
