あなたと治療 ページ44
閉店準備を終え、店を閉める。
ちょっとした騒ぎになったため、常連さんから心配の言葉を貰ったけど大丈夫だと言って笑って返した。
ほっと一息をつく。
今日ははじめから臨時休業にでもしておけばよかったと後悔する。
混乱が溶けてきて、緊張感もとけたため、先程のことを思い出して少し震える。
恐ろしかった。
鬼より恐ろしいと感じたのだ。
言葉は喋れるのに通じないというのはとても怖かった。
涙こそはでないが、傷はより深い。
「お疲れ様だ!」
『うん、お疲れ様。ありがとう』
「いいんだ!」
ニカッと笑う彼。
私のために怒ってくれたとても優しい幼馴染。
『あ、借金の件なんだけど、私が貯めて返すよ』
「いや、いいんだ!俺が払う!返さなくていい!」
『でも、』
「金の使い道がないのでな!大丈夫だ!」
安心するといい、と頭を撫でられる。
何から何まで申し訳なくなる。
この関係を崩したくなくて、彼に気持ちをずっと伝えられないままでいるのだけど、このままでいいのだろうかと最近思っている。
伝えない方が失礼ではないか?
なんて思いながら自分の胸に手を当てる。
ふとあなたが私を抱き寄せた。
「腕は大丈夫か?」
『うん、さっきも言ったけど大丈夫だよ』
「そうか!ちょっと見せてみろ!」
腕を優しくぐいっと上げられる。
腕を見るとくっきり手の跡と爪が食いこんだ跡があった。少し血が滲み出ている。
うわあ、こういうのは気づかない方が痛くないやつだよ。
そう思いながら苦笑いする。
「血が出ているじゃないか!」
『うん、でも大丈夫だから』
「大丈夫じゃない!」
手当をする、といって救急箱を取りに行く。
私はその場に座り、杏寿郎くんを待つ。
本当に優しいひと。
私がいつも救急箱を出す場所を覚えていたのか、直ぐに戻ってきた。
私の前に座り、腕を出すように促す。
私は言われた通り腕を出すとごくりと唾を飲む音が聞こえた。
「鬼が人を喰らう理由がわかる気がするな!」
『そんな物騒な』
「俺は今この腕にしゃぶりつきたい!」
『なっ!』
自分の顔が真っ赤になっていくのがわかる。
何を言っているのだろうか。
「ダメだろうか、」
眉をさげ、甘えるように言うあなた。
うぐぐ、っと思わず声を漏らす。
わかっていてやっているのか。
可愛い。
でも、ダメなものはダメである。
一息着いて口を開こうとすると腕をぐいっと引っ張られ、腕にちゅっと口付けをされた。
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ねむこ(プロフ) - 柑橘蛍さん» 柑橘蛍さんコメントありがとうございます〜!わかります.....推しは尊いですよね....読んでくださってありがとうございますー! (2021年2月12日 12時) (レス) id: 81a8bcf75d (このIDを非表示/違反報告)
柑橘蛍(プロフ) - 今日も今日とて推しが尊い…! (2021年2月10日 0時) (レス) id: c6603d0c65 (このIDを非表示/違反報告)
ねむこ(プロフ) - 晶子さん» はじめまして!コメントありがとうございますー!記憶したい!?!そこまでですか〜!?感謝です... (2021年1月17日 0時) (レス) id: fdabd54cfd (このIDを非表示/違反報告)
晶子 - 初めまして!何ですかこの神作品は!?最高です( ; ; )何度も読み返してしまいます。。!!もう記憶してしまいたいくらい!! (2021年1月15日 20時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
ねむこ(プロフ) - 沙希さん» こちらこそありがとうございます...!!!!!!長編なので大変でしょうけど最後までよろしくお願いします...! (2021年1月10日 13時) (レス) id: fdabd54cfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねむこ | 作成日時:2020年10月28日 8時