明智のち天海 〜死神たちの短編集〜

大切な人2 ページ41

あの人との出会った日は今でも覚えている

貴方を殺すのは私

そう思って貴方に仕え続けて生きてきた

だけど

どうして

私の隣にいないの？

貴方は本能寺で倒れたときいた

私を追いて

あの時私に言った言葉は忘れてしまったの？

私を仕留められるまでになりなさいって

そう言ったのに

どうして

私が殺す前に逝ってしまったの？

いや...

きっとそんなの嘘よ...

あの方は絶対...




一人さ迷う森の中

どれくらいの時が経っただろうか

あの人が生きているわけないのに、悪戯にあちこちをさ迷う




隣に立った時に頬をくすぐる白銀の髪

剣の腕が上達した時に向ける優しい眼差し

武功を上げた時に良くやったと頭を撫でてくれた冷たい手



え....？

今さらどうしてそんなことを

そんな些細なことを思い出すの？

どうして

どうして

涙が止まらないの？

私はあの人を殺すためにあの人に仕えた

あの人は私にとってただの獲物に過ぎないのに

どうしてそんなことを思い出して涙が...

私はいったい...



ガサッ ドスン

突如目の前に現れたかぶと虫...?

いや、人だ

見事な転びかたをしたその人は私のことを見て怯えた顔でこう言う

小)うわぁ！ごっごべんなざぁぁぁいぃっ！

土下座をし出し、私がどうしたら良いか困っているとその人は表を上げて私の顔を見て怯えた顔はそのままに不思議そうに首を傾げた

小)あの...君、泣いているの...?

貴)っ...！

小)あっあの...なんだか君、あの時の天海様に似ている気がする...

貴)天海様...?

小)いつも僕を守ってくれるお坊さんなんだけど...初めて会った時、君と同じように泣いていたんだ...

貴)私は別に泣いてなんか...

涙を拭きながらそう言うも次から次へと流れてくる涙

小)あの...悩んでいることがあるなら僕のとこに来てみない...?天海様がいるから悩みをきいてくれるだろうし...あっ！僕は小早川秀秋...きっ君は？

貴)私はA...貴方があの鳥城城主の小早川秀秋なのね...

小)えっ、僕のこと知ってるの?

貴)昔、ある方に仕えていて...各地の武将は大体知ってる...
実はね、私はそのある方を探しているの...

小)そっそうなんだ...だったら、天海様がきっと助けになるよ！よく法を説きに各地を巡っているから何か知っているかも！

どうして私はこの人にそんなことを話しているのだろう？

初めて会ったのについ気を許してしまっている

貴)私、貴方について行く...

気付けばそう返事をしていたのだった

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