71 (映画撮影開始) ページ21
「はーい、Aちゃんお疲れさまでした〜!」
カメラマンさんと雑誌企画担当者の人が私に声をかけて、ブライダル雑誌の撮影が終わる。
チャペルでの撮影で、プリンセスラインのドレスを着て座って見上げるのと、窓際に立って幸せそうに花束の香りを嗅ぐようなのと2通り撮られた。
『ありがとうございました!』
控え室で着替えて外に出ると、朝からの撮影だったのに既に日がだいぶのぼっていて、梅雨明けでジメッとした湿気と初夏の暑さが肌にまとわりつく。
日傘を差して、マネージャーと駐車場へ向かった。
写真のデータ見せてもらったけど綺麗だった。
ウェディングドレスに負けないようにとメイクが濃いめだったから、メイクさんに「ヤスさんと何となく似てるって言われません?」って言われてギクッとした。
全然違うって笑って返したけど。
「Aさん、カラードレス着るかどうか心配してましたけど、なくて良かったですね」
マネージャーさんが車のキーのスイッチを押してから言った。
『うん。やっぱり白以外にも着ちゃうと、婚期遅れそうじゃない?満足しちゃって』
「楽しみは後にとっておくんですね」
マネージャーさんの柔らかい笑みに、同じように笑って頷く。
本当は、百が嫌がりそうだから心配だったってだけなんだけど。
カラードレス、タイミングなくて見せなかったし言わなかったし。
百が手当たり次第に雑誌買うって言い張ってたけど、あの後・・・なんというか・・・スッキリしたって感じで・・・言わなくなったし、半分冗談だったんだと思いたい。
・・・思い出すと恥ずかしい・・・
でも私も私で、百が急なヤキモチみたいなのになってたから、そういうの久々で嬉しかったな。
愛されてるのはわかるけど、最近は感情より理性って気がしてたから余計に。
瑠璃さんのドレス姿見る前に、式あげたくなるって瑠璃さんに言われたけど、自分がドレス着る前と後で結婚したくなる気持ちが強くなったって思うこともなかったし。
・・・百はどうなんだろ?
っていうか百のことばっかり考えてるな・・・
我に返って、やっとクーラーが効いてきた車内から外に目を向ける。
次に向かうのは、昨年も撮影した探偵映画の続編の顔合わせ。
気心知れてる人たちなのがいい。
ただゲストが誰かは今日わかるんだけど。
前はミナと千だった。
今回は誰か、ちょっと楽しみになりながら、百に“雑誌の撮影終わったよ!これから映画の顔合わせ行ってきます!”とラビチャを送った。
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作者名:miz | 作成日時:2021年7月3日 9時