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みんなの視線が千のいる所に集中している。
人目がどうのとか思ってられない状況に、百たちと千の方に走る。
「どしたの?ユキがなんか言った?」
千から程々近くにいたスタッフに百が声をかける。
千がなんか言った?って聞くとこが、千が時に余計なこと言うのをちゃんと把握してるよね。
崇拝に近い気持ちがあるわりに。
スタッフはチラッと気まずそうな表情で私を見る。
すぐに百を向いて口を開いたけど・・・嫌な予感。
「千くんじゃないよ。あの子たちが言ったんだ。“同じ事務所や同期の立ち位置を理由に仲良くしなきゃいけなくて、エレクトーン弾けるだけでAちゃんをメンバーにしなきゃいけなかったって大変ですね”って。それまでは千くんは適当に相槌うったりしてるだけだったんだけど・・・」
「『!!』」
百と一瞬目が合う。
すぐに千の傍に走った。
私が心配してたことが起こった。
苦い気持ちになりながら走ってると、千の声が聞こえた。
「ーー言っておくけど・・・“友達”や“メンバー”の立ち位置を言い訳に介入してるのは僕らの方だ。Aはそれを理由に僕らに甘えたことなどないし、君たちにこんな風なことを言われたりされたりしてるのに、一度も相談すらもしてくれない。そういう子だよ」
うわ、すごい怒ってる。
相手が女の子でも基本は容赦ないもんね、こういう時。
でも千が言い聞かせるように言ってるおかげか、相手の子は千が怒ってるのに気づいてないみたいだ。
「だから、そういう計算ーー」
「確かにAは頭が回るけど、君らも大っぴらにAを攻撃してなかったから、オレの耳に入る可能性は低かったでしょ?個人を特定させないやり方。頭良いよね!尊敬しちゃう!」
あれ?
百も怒ってる・・・?
笑顔で褒めてる風だけど。
百にはうまく場を納めると思ってたから想定外。
「自分を優位にするために誰かを攻撃するような女に、僕らが興味を持つわけがないだろ」
冷たく言い放った千に、ギョッとする。
さすがに止めようと口を開きかけた時、百が苦笑しながら口を開いた。
「ユキ、そこまで言っちゃ可哀想だから。ごめんね、みんな!お騒がせして〜!オレたち帰りまーす!差し入れ食べてね〜」
百が千の腕を引いてずんずん歩いてく。
「ごめん、あとよろしく」
私の横を通り過ぎる時に百が囁く。
その背中を見送りながら呆気にとられた。
この状況の収拾を私にやれと!?
大きくため息が出る。
すぐにその場にいる全員に笑顔を向けた。
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作者名:miz | 作成日時:2021年7月3日 9時