図書室での秘密 (ページ23)

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『マルレネ・ディートリッヒ』 7 ページ23

嗚呼、何で私ってこうなんだろう。

どうしようもない自分への嫌悪感が身体中を駆け巡った気分だ。

大声で何か言っている先生達。生徒達も、ヒソヒソと何かを話している者、心配そうにこちらを見る者、クスクスと笑う者とで様々だ。

ただ、みんながこっちを見てる。

思い込みじゃない。事実なんだ。

もうやだ。恥ずかしい。見ないで。逃げたい。

羞恥と自己嫌悪でどうにかなってしまいそうで、震えが増した身体を起こそうと腕に力を入れた。

瞼に熱湯が溜まる。

嘘、私泣いてる。

こんなところで泣いてどうするんだと、更に自分が嫌いになる。

ズキズキと痛む身体は中々動いてくれない。力を入れても、身体の重みと震えで腕から崩れ落ちてしまった。

「無理しないで下さい」

不意に周りが暗くなり、まるで私から他の人達を遮るかのように影が差した。

ガタガタと震える肩に、そっと当てられた手は温かい。

「くろこ、せんせ」

「痛かったですよね。

保健室、行きましょうか」

笹草さん、保健室連れてきますね。

オロオロと慌てる他の教師にそう告げると、先生は抱き上げるように私を立たせ、歩けるように肩を貸してくれる。

酷く痛むけれど、何とか歩ける。まだ治っていない足は地面に触れるだけで痛いけど。

丁度体育館を抜けたとき、先生はピタリと動きを止めた。どうしてかはわからないが、取り敢えずこのタイミングにお礼を言わないと。

「あの、ありがとうございます」

「大丈夫ですよ。

それより、ちょっと急ぎますね」

ふんわりと優しく笑って、先生は固まっている私の背中と膝裏に手を回した。

次の瞬間、身体が先生の近くへと引き寄せられ、宙に浮いた様な感覚がした。

「！？せっ先生！あの、大丈夫ですから！

下ろしてください！」

「駄目です。怪我をしている女性を歩かせるようなこと、僕はしませんよ。

悪化しますから、大人しく運ばれてて下さい」

元々、歩かせる気なんてありませんでしたから。

でも、体育館だと目立つでしょう？

……何それ、恥ずかしすぎる。

いつもより近くにある顔に、直ぐ上から聞こえる声。

身体中の熱が顔に集まった気がする。

「…………ありがとう、ございます」

「ふふ、どういたしまして」

…………お姫様抱っこ。

この状況も手伝ってか、先生の雰囲気や口ぶりから、まるで恋人のするようなことをしてる気がして……

馬鹿だ。私。

打ち消すために、急いでかぶりを振った。