図書室での秘密 (ページ22)

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『マルレネ・ディートリッヒ』 6 ページ22

全校生徒が集まる体育館。

騒めきは教務主任の先生の声で止み、静まり返った中で校長先生の話し声だけが響く。

いつも話長いとか思っててごめんなさい。頼むからもっと長く話して。

いつもじゃ絶対に願わないことを願うのはこの後の表彰のせい。前にいる数人の生徒の間から、校長先生を助けを求めるように見つめる。

だが、そんなものに気づく校長先生でも無い。というか気づいたらちょっと怖い。

いつもは眠っちゃいそうな話も、今日は凄く短く感じた。

え、先生今日の話短くないですか？いつももつと長いですよね！？

「校長先生ありがとうございました。

では、引き続き表彰に入ります」

ドクン

心臓が嫌な音を立てた。

心臓だけじゃない。まだ残暑が続いているというのに、手足が震えて指先が冷える。

駄目。無理。死んじゃう。

ネガティヴな言葉が脳内をグルグル回り、なけなしの自信を砕いていく。

と、そのとき、聞き覚えのある声がした。

「夏休みに行われた全国読書感想文コンクールの結果を発表します」

聞き覚えのあるどころではない。1週間に一度、ずっと楽しみにしていた人の声だ。

間違うわけがない。

そうか、先生が発表するんだ。

震えはまだ止まらないものの、たった今知った事実に一瞬だけ思考が停止し、再起動する。

緊張は、解けないまま。

「名前を呼ばれた人は、返事をしてその場に立ってください。

文部科学大臣賞、1年4組笹草文香さん」

「は、はい」

声が若干震えたが、まあ大丈夫だろう。

人と人の間を通って前に出ると、黒子先生の涼やかな瞳が私を捉えていた。

急に、顔に熱がこもる。

私は何に赤面したんだ。緊張？みんなに見られてるから？

……きっとそうだ。

自分に言い聞かせてから、震える足で踏み外さないように気をつけながら壇上への階段を上る。

しわくちゃの顔を更にしわくちゃにした校長先生が目の前にいた。どうせなら、黒子先生から貰いたかったな。

賞状を読み上げてから、向きを変えて手渡される。

「――――おめでとう」

「ありがとうございます」

お礼を言ってから、クルリと向きを変えて階段を下る。

よかった。なんとか無事終わった。

ーーーーこのとき、終わったと思って気を抜かなければよかったんだ。

階段を下りる私の足が、階段を踏み外して下へと落ちていく。

踏みとどまることも出来ないまま、宙へと投げ出された身体はそのまま床へと落ちていき、鈍痛が身体を支配した。

……やらかした。