『マルレネ・ディートリッヒ』 3 ページ19
それからは最悪だった。いつまでも、わざとらしく控え目を心得た上での二人の会話に耐えかねた私は、痛む足を引きずりながら別の車両に移った。
心なしか、あの場にいる全員の目線が私に向いているように感じた。全員では無いかもしれないけど、あれだけ大きな声で会話していたんだ。見ていた人は少なくなかっただろう。
別車両は前よりのずっと混んでいた。埋もれそうなほどたくさん人がいたけれど、こうしていれば、自分が人ごみに紛れてわからなくなるだろうから、ほっと安心している自分がいた。
『あんなに小さい子が前にいるのに代わってあげないなんて、薄情な子』
どこからか聞こえたあの言葉。グサリと私に突き刺さった。
お年寄りや妊婦さんに席を譲るのはマナーだけど、今のケースはどうなんだろう。私は、気付いた時からあの子に席を譲ってあげるべきだったのか?
私の片足は今も鈍い痛みを主張していた。これよりも、あの子はもっと痛い思いをしていたのか、そんなに疲れていたのか?
小さい子、という弱い存在が絶対なの?
イライラする。自然と眉間に皺が寄っていた。
その皺を揉みほぐしながら、人混みの中に埋もれていた。
もうちょっとで、いつも降りる駅に着く。そこまで我慢だ。
電車に揺られる時間が、いつもより長く感じた。人に押される様に電車を降りた。
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作者名:みい x他1人 | 作成日時:2017年5月25日 20時