62(加筆修正) ページ16
『えっ、と』
……まさか、こんなところに人がいたなんて。
数秒前の自分の安直な行動にツッコミを入れてももう遅い。
しかも、驚いたように目を見開き、長い睫毛を揺らす目の前の人には、見覚えがあった。
"……ん?そういえば、喜八郎はどこだ?"
"喜八郎ならば、先に戻って報告するよう俺が指示を出しました"
……そうだ。
昨日、潮江さん達と一緒にいた、五年生の綺麗な人。
名前は知らないけど……って、それよりも!
『ごっ、ごめんなさい!勝手に開けてしまって』
「……。」
私は慌てて頭を下げる。
けれど、暫く待っても返事は返ってこなかった。
昨日、この人には目を逸らされたけれど……やはり、嫌われているのだろうか。
私は部屋を見回し、首を傾げる。
『あの、ここは何をするところなんでしょう……あ、鍵!』
手に握られてる鍵を指差せば、その人はハッとしたように自分の手元に目を移す。
そして、バツが悪そうにその鍵を置いた。
『えっ』
「……俺はこの鍵を置きに来た。あなたには関係ない」
絶句する私をそのまま通り過ぎ、その人は歩き出す。
私は慌てて声を上げ、引き留めた。
『ちょっ、ちょっと待って下さい!でも、鍵がないと……』
「……いらない」
その人は足を止め、ゆっくりと此方へ振り返る。
鍵を渡そうとする私の手を跳ね除けて眉を顰め、言い放った。
「ここは"もう"……俺の居場所じゃない」
_なんて、辛そうな顔。
ふわり、と艶やかな黒髪が揺れる。
私はただ立ち尽くして、去っていくその人をもう引き留めることは出来なかった。
.
.
『これ、どうしよう』
手のひらに小さな鍵をのせ、私は息をつく。
あれから自室に戻った私は結局小屋を放っておけず、施錠して鍵を持ち帰ってきてしまった。
どこかであの人に渡したいけれど、あの様子じゃ……難しいだろうな。
『くしょんっ』
……というか、さっきからくしゃみが止まらない。
私は立ち上がって、上を見上げる。
さっきから何故だか、天井に違和感があるのだ。
……そう、まるで"何か"が潜んでいるような。
『……もしかして、動物か何かがいたりして』
そうすれば天井が軋んで埃が出るから、くしゃみが多いのも説明がつく。
私は部屋の隅に置いていた踏み台を持ち出し、天井の板に手を伸ばした。
どこか開けられないかと思い、いくつか押してみる。
その中の一つ、ある板に少し力を入れれば、持ち上がる感覚が返ってきた。
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凛(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (4月16日 22時) (レス) id: f020fc6e38 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて本当に嬉しいです。また頑張りますね! (8月28日 20時) (レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 更新をずっとお待ちしていた作品なので本当に本当に嬉しいです…!!これからも、陰ながら応援させていただきたいです! (8月26日 8時) (レス) id: 17751e89f9 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - 麗羅さん» お久しぶりです、コメントありがとうございます!そうなんです……。あっちはいろいろ慣れなさすぎて、一時帰国ではなく日本にずっといたい位です笑更新頑張りますね! (8月24日 1時) (レス) id: d23310e530 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - 更新ありがとうございます!海外留学中だったのですね……。すごいです!これからも応援しているので、作者様のペースで更新頑張ってください! (8月21日 22時) (レス) @page26 id: 5152279fe6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海鈴 | 作成日時:2022年8月13日 22時