若人よ、無茶をしながら生きるべからず ページ48
「……ぁ」
薄い飴色の天井が、少しずつ木目を帯びて見えてくる。
頭が重いと感じて、額に濡れタオルが置かれているのに気づいた。 べしゃ、と顔の横に落ちたからである。
『スナックお登勢』だろうか。否、天井の灯りが違う気がする。だとすればここは何処だ。
すぱん、と小気味いい音を立てて襖が開いた。ぐらり、と首を動かすと洋装の裾元が目に入る。
「おー、起きたか。どうだァ、身体は」
「え、っと……重い、です…」
「そうかァ。おら、タオル乗っけとけ」
「あの……ここ」
「万事屋だよ。おめー、ぶっ倒れたの覚えてねぇだろ」
「……倒れ、た」
寝起きのたどたどしい受け答えに苛つくことなく、おぉと返す家主。
新しい濡れタオルを額に乗せ、体温計を口に差した。
倒れた、と言っていた。そう言えば、ここ最近はろくに寝れていなかった気がする。
食欲もなく、梅干し一つで済ませてしまう日もあった。栄養不足がたたるのも当然だ。
「医者に診てもらったんだけどよォ、睡眠と栄養不足だと。タンパク質摂ってねぇから肉がねぇって。ガキが生意気にダイエットですか、坊主気取って断食かコノヤロー」
「……そうですか」
「ババアに言ったら有給だとよ。昼も夜も働いて、俺らも甲斐性見せやがれって怒られたわ。なんで流れ弾喰らわにゃならねーんだよ」
「はは……」
「……昼は雑貨屋、夜はババアのスナック? 働くのホント好きね。たまじゃねーんだからよ」
「まぁ……そうでも、しないと…お金、貯まらないですから…」
「なに、どっかから借金こさえてんの? まさかどっかの消費者金融行ったんじゃねぇだろうな」
「違いますよ……修理費、です…」
「あぁ? 修理費だ?」
「真選組の……方に、道場の修繕、頼んで…どれくらいお金、かかるか分からないから…貯金、しておこうって…」
「んなの甘えとけよ。アイツらもただ税金かっぱらってスーパッパしてる訳じゃねーのよ? 幕臣の接待だのなんだのあるかもしんねぇけどよ、溜め込んでんなら出させときゃいいんだよ」
「分かんない、じゃ…ないですか」
「あ?」
「もし、真選組の……幕府との、繋がりがあるって、知られたら……また、あの子たちが、どんな目にあうか…
どれだけ、今は大丈夫でも……それが、怖いんです」
無力な自分が憎いと感じた。真選組の手を借りなければ、あの子たちは今頃どうなっていただろう。
親代わりとして、あの家を、家族を守るにはと考えに考えた結果が、これだ。
リュックの中身パンパンにしたら誰だって動けなくなる→←春でもなるもん、インフルエンザ
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りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています!もし決まってましたら、大前兄妹の年齢を教えていただけないでしょうか? (2021年2月24日 15時) (レス) id: 5b2ad52f60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年2月23日 17時