メロンパン ページ27
アランがメロンパンを口に運ぶのを見て、私もドーム型に膨らんだそれを口に運ぶ。
サクサクのクッキー生地に歯を立てると、「ザクッ」と言うべきか「パリッ」と言うべきか、どちらにしろいい音が聞こえた。
瞬間、小麦の香りが鼻から喉に、全身を駆け抜ける。
外はサクッ、中はフワァ……この感じがたまらなくいい。大成功だ。
雰囲気が出るように入れておいた網目状の切れ目にグラニュー糖が集まっていたみたいで、甘いメロンパンになった。おやつとしては丁度いい。
「前言撤回。見かけだけじゃねえ、味も本物だろこれ!!」
「材料は特別なもの使ってませんよ。ただ、ちょっとしたコツを積み重ねてるだけです。バターを最初に入れるんじゃなくて、生地をいったんこねた後に包み込むように入れたり」
時間的なことを考えると、最初に一緒に混ぜる方が楽だけれども、やっぱり後で入れたほうが美味しいって思う。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ごちそうさま。美味かった」
彼はそう言って、手に付いたメロンパンの粉をすっと舐めた。
「粉まで美味いな」
「逆に、粉が美味しくなくて本体が美味しいメロンパンなんてあるんですか?」
冗談めかして笑うと、彼は「さあな」と軽く流し、荷物整理を始めた。
その後に続き、私も部屋の片づけ――主に台所――と自分の荷物整理を始める。
「エイセツまでに、もう一つ町があるんですよね。確か……」
「レンリタウンだ。
……俺としてはすぐに通り過ぎたい町なんだが」
彼は露骨に嫌そうな顔をした。
「え? なんでです?
滝とか有名だし、行ったことないけれど、いい町だと思いますよ。確かにジムはないですけれど」
「すまん、さっきの言い方は語弊があるな。
町はいいんだ。ただ、あまり会いたくない人がいるってことで」
「???」
どういうことなんだろう……。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「さ、行くぞ」
「はい」
部屋の鍵をちゃんと持って、受付へ向かう。忘れ物はないはず。
チェックアウトを済ませ、ラルとリザードンのモンスターボールを返してもらう。
ポケモンセンターから出て、最後にヒャッコクの日時計を見上げ、18番道路に向かうゲートに入る。
「ねえ、さっきの『あまり会いたくない人』って……?」
どうしても気になってしまい、失礼だとは思っても訊いてしまった。
「その通りの意味だ。できることならハクダンから回り込んで行きたいところだが」
そんな遠回りしてまで会いたくないのかぁ。
24人がお気に入り
「アニメ」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
頂志桜(サム)(プロフ) - 夢代ツバキさん» ありがとうございます!続編にまたぐ感じで、アランの計画が露見していきます!お楽しみに! (2016年10月16日 12時) (レス) id: f46217bc92 (このIDを非表示/違反報告)
夢代ツバキ - 頂志桜(サム)さん» アラン、何する気なのかな?まさか、ピアノだったり・・・?ドキドキが止まんないです。頑張ってください (2016年10月16日 11時) (レス) id: 39392b36ad (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - ユーさん» ありがとうございます!優しいというか、過保護というか……。そんなところを気に入ってもらえると嬉しいです! (2016年10月14日 15時) (レス) id: f46217bc92 (このIDを非表示/違反報告)
ユー - アラン、優しい!続き、楽しみです! (2016年10月14日 15時) (レス) id: fa9502f7ab (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - 夢代ツバキさん» ありがとうございます! 寝てる最中にそんなことされてるとは、本人は知らないんですよね〜。本当はちゃんとそこらへんも掘り下げたかったんですけれど、何しろ話数がきついので……。 (2016年10月13日 21時) (レス) id: f46217bc92 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:頂志桜 | 作成日時:2016年9月30日 18時