3.後悔先に立たずー上杉ー ページ3
「…上杉。国語の成績は悪くても数学がいいんだからそこまで落ち込まなくても…。」
と小塚が言った。
数学だけ出来ててもダメなんだっつーの。
小塚は理科と社会ができるからいいが、俺は違うんだ。
"数学"だけなんだ。
んー…たまには立花に連絡入れてみっかな。
電話かけた理由はどうしようか…。
仕方ない、良さそうな数学のテキストがあったから、でいいかな。
久しぶりに話せることに少し幸せに感じながら、俺はいそいそと電話をかけた。
「あの、立花彩さんの友人の上杉和典と申しますが。彩さん、いらっしゃいますか。」
「はーい…。ちょっとお待ちくださーい…。」
めんどくさいと思っている部分が丸出しだった。まぁ、あいつと話せるんだったらどーでもいいけど。
「立花彩です。上杉君、ですよね?」
相変わらずきれいなソプラノの声だった。
「どうかしたの?電話かけてくるって珍しいね??」
俺は理由を説明し、立花の家へ向かうことになった。
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「いらっしゃい。」
と相変わらず彼女はまるで太陽のような笑みを浮かべて、俺を迎えてくれた。
しかし、俺の顔を見た途端、表情は曇った。
「…上杉君、どうしたの?私は頼りにならないかもしれないけど、よければ相談に乗るよ。」
と彼女は優しげな表情で言った。
俺はそのやさしさに甘えて、事情を大雑把に説明した。
彼女は真剣な表情で聞いてくれた後、俺に向かって、
「それはまさに後悔先に立たず、だね。」
と言った。
「後悔先に立たず、というのはね、済んでしまったことを後から悔やんでも仕方ないってこと。上杉君、今まさにそんな状態じゃないかな?私も一度、いや何度か得意科目で落ちちゃったことあるんだけどね、そんなことを考えずにいつも通りにコツコツと努力すればきっとできると思う。」
と彼女はアドバイスをくれた。
俺はありがと、と言って立花の家を後にした。
もちろん数学のテキストは渡してきた。
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