晴れの日は１ ページ1
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ある雨の日の事。
公園の隅っこに ひっそりと佇む屋根付きの休憩スペースに楽しそうな鼻歌が響いて居た。
ふわりふわりと舞っては雨に叩かれ地面に落とされる楽譜を 私は遠くから延々と眺めている。
何と滑稽な姿だろう
書いては楽譜を投げ、其の音は雨の雫に濡れて歪む。
...嗚呼勿体無い。私が曲にして、紡いであげるのに。
珍しくそんな事を思ってスカーレットの髪色を持つ彼にぼんやり近付いた。
「ねえ、なにしてるんですか？」
小さく肩を震わせた彼は、ゆっくりペンを置き そっと私を見上げる。
だっさいパーカーの上から羽織られているのは私立夢ノ咲学院のブレザー。ネクタイは黒で学年すら解らない。
... 私がそんなものよりも惹かれたのは、幼く輝くメドウグリーンの瞳。
ちかちか私の前で瞬いて視線を離そうとはしないのだ。
純粋に綺麗、と思った。
こんな可能性を秘めた好奇心の塊のような瞳を私は 未だ嘗て見たことがない。
暫しの不思議な無言の後
きょと、と小首を傾げた彼は結んでいた口を開いた。
「...... お前、誰だ？」
不思議そうなトーンで慎重に言葉を選んだのがよく伝わった。
だが結論的には安直な質問。
誰と言われても、何と答えていいのか直ぐに解らないのが難点だろう。
「えっと、」
「お前、もしかして宇宙人か！？ あの忌々しきモーツァルトより天才的な曲を書くおれをアプダクションしにきたんだな！？そうなんだな！？」
「え、えっと...？」
「ほ〜、宇宙人って本当に居たんだな！でも残念だ、おれは今アプダクションされる訳にはいかない！大切な奴らを護らなきゃいけないから。きっとお前についていけば霊感が湧く歴史的な楽曲が書けるんだろうけど、今は我慢だ。」
「いやだから、」
「いや！この事を口外したりなんてしないぞ？もしかして名前を言いたがってるのか？でも、日本に馴染む為に花子とかそんな感じじゃないのか？ああ、待って！言わないで、妄想させて！！」
... 言う前にこの人は 平凡な高校生の正体を妄想してくれるらしい。
もう特に言及する気もなくなった
いっそ彼の言う通り宇宙人でも良い気さえ してくる。
うーん、うーん。と唸り声が聞こえて、まともに会話できるようになったのは約５分後のことだった。
此れが私と彼 _____ ” 月永レオ ” との衝撃的な出会い。
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