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「 え、ちせんぱ、! 」
勢いよく病室に入ってきた彼女を、僕は慌てて受け止めた。
怒られながらも やはり走って来たんだろう。
綺麗な髪は乱れてて、息は上がっている。
たしかに だだっ広い病院だ、どこから来たのかはわからないが余程疲れたに違いない。
「 どうしたんだい?そんなに慌てて... 椅子、座っていいよ 」
「 あっ、いえ、このま、まで…!だいじょぶです! 」
... お別れが近いのかもしれない。
昔から勘がいい僕にはわかってしまった。
というか、決意を決めたような表情をしているから察してしまったのだ。
やっと手に入れた、否 僕の元に来てくれた彼女を離したくはなかった。
「 あのあの、聞いてください!私、私! 」
「 ふふ、落ち着いてよ。僕はずっときいてるから 」
「 留学、することになりました...。 」
彼女はきっと、混乱しているんだろうな。
嬉しいのと、寂しいのと、頭の中が掻き混ぜられているような感覚。
解らなくもないよ、なんて。
「 カナダに行くんです。療養のために。気候が合うらしくて、1年ほど。 」
「 うん、 」
「 あの、えっと。 」
「 ... 」
「 待っててくれますか? 」
小さく首を傾げて、涙を拭って。
... そんな姿も愛おしくて。
そう、最初は利用しようと思っただけだった。
好きにならないように、自己防衛をしたつもりだったのに。
儚くも美しい彼女に、強かな彼女に。
否、全てに惚れてしまったんだ。
「 ずっと、待ってるよ。 」
「 本当ですか 」
「 うん、本当。 」
離れていた彼女の手を引いて、また抱き締め直した。
ふに、って小さい女の子。
大事に、こわさないように。
「 誓いを、建てましょうよ 」
「 誓い。 」
「 ええ、行きましょう 」
顔を上げた彼女の瞳は涙で煌めいていて、その手に引かれて僕は病院裏の森に向かった。
嗚呼、今日はやけに暑い。
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MinT(プロフ) - さくやーさん» わわ、閲覧ありがとうございます (^-^) そう言っていただけて何よりです!!! (2017年5月30日 9時) (レス) id: 2b0d780a77 (このIDを非表示/違反報告)
さくやー - 読ませていただきました!!とても面白かったです!英智様最高です! (2017年5月30日 1時) (レス) id: 5ce56128e2 (このIDを非表示/違反報告)
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