12話 ページ12
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本当にそういう所だぞ、私！と鬱くんに全面的に甘い自分を今日もまた心の中で叱咤した。
『冗談やって』で片付けられたかと思われたそれにサラッと鬱くんは付け足す。
「俺な、一応言うとくけど女の家には泊まらへんで」
「……嘘ばっか、」
「嘘ちゃうわ。後腐れない付き合いを心がけとんねん」
どの口が言ってるの？という一般的感覚から見た当然の疑問を投げかけることはせず、「あ、そう…」と短く返した。
言いたいことを一方的に告げて満足したのか、ぐっと伸びをしつつ立ち上がる鬱くん｡なんだか煮え切らない思いでその動向をぼんやり目で追っていれば、なんの迷いもなく寝室へ入っていった鬱くんは寝転がったベッドの上から私に声をかける。
「たまには俺も壁際で寝たいねんけど」
「じゃ床で寝たら？」
「冷たいなぁ、優しくしてや」
後を追ってそっとベッドに近づいた私は寝そべる先客をじっと睨む。
あっためといたで、と壁際からごろりと動くのを見て、その隣に潜り込む。
例えば。もしここで鬱くんが私に触れたとしたら、私と鬱くんも一気に後腐れのある付き合いに様変わりするんだろうか。
ほとんど距離など取れないこの空間で、鬱くんの体温を間近すぎるほど間近に感じながらも、鬱くんは決して私に触れてこない｡寝てる最中足蹴りを食らうことはあったとしても、意図的に、人為的に触れられたことは今まで一度もなかったのだ。
「……A、寝た？」
「寝た」
思考を現実に引き戻した鬱くんの声に間髪入れずにそう返せば、「あ、じゃあ聞こえてへんらしいから言うわ」と全く予想外のことを言われたじろぐ。
お互い背を向けたベッドの上、背中越しの鬱くんの言葉に″寝ている″私は聴覚を研ぎ澄ませる。
「俺、Aが他の男のために飯作るん嫌や｣
俺の特権やったんに奪わんといてよ、と。
「………え、鬱く、」
「あ〜よかった、Aは寝とるから俺の本音も聞こえてへんねやろなー」
寝とってよかったー、と大根芝居すぎるトーンでそう言ったきり、鬱くんは押し黙る｡
取り残された私は、やけに温度の高くなった気がする布団から顔を出して枕に顔を押し付けていた。
最初からそんなつもりは毛頭ない、と言えば、鬱くんは喜ぶのだろうか。
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赤月セレン(プロフ) - コメント失礼します。物凄くお話にのめり込んで一気に読んでしまいました…とても良くてもう好きです（笑）tnさんの方の小説も楽しみに読ませて頂きますね。素敵なお話をありがとうございます、更新お疲れ様でした。 (2021年3月6日 22時) (
レス) id: f86cb701a2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - ずきゅん (2020年8月28日 1時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
おいちこ(プロフ) - 完結おめでとうございます＆ありがとうございますっ！！凄い、素敵でした...2人が幸せに結ばれて、私も幸せですぅ...ニヤニヤ止まんなかったですぅ...新作も読ませていただきますぅぅ...!!!!更新、頑張ってください！！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 5a28085a2a (このIDを非表示/違反報告)
やち(プロフ) - 完結おめでとうございます！生活感のある日常に散りばめられたもどかしさと時々挿まれるドキッとする描写のバランスがたまらず、更新のたびにとても楽しく読ませていただきました。ゆららさんのsyp君がまた素敵で転がるほど好きでした…！次回作も楽しみにしています！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 6f58a85157 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - かげでこそこそと見させて頂いておりました。なんとも言えない大人のもどかしさがまた純愛のようなものが感じられてとても良い作品でした。完結おめでとうございます。 (2020年4月25日 2時) (レス) id: bbf23e1c65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年3月22日 1時
