人獣の4噛み ページ5
『……』
目の前で静かに眠る少女は、さっきまで人を殺したとは思えないほどあどけない寝顔
まるで幻覚か何かだったのかと思うほど
「……しっかし、急に眠るなんてな」
そう、彼女はバタリと眠っていたのだ
まるで自分の意思で眠ったように
髪の長い彼は胡座をかき、右手で頬杖をつき眠る少女を見下ろす
空いた左手を少女の頬に伸ばす
そして指先がそのすべらかな頬に触れかけたその時
『ん……誰』
少女がパチリと目を開いた
「うわっ!」
彼は左手を瞬間的に離し、自分が何をしようかと我に帰り、頬を薄く染めた
『……何?』
少女はのそりと起き上がる
「あっ、いや……何でもねぇ!」
彼は立ち上がるとばたばたと走り去っていった
『……何今の』
少女は周りを見渡した
暗くて冷たい牢獄、多分地下
手首足首には重たい枷と鎖
少女は怪訝そうに顔を歪める
『こんな鉄で捕らえるくらいなら殺せばいいのに……』
そうポツリと呟き、少女は伏し目がちに虚空を見つめた
暫くすると黒髪の役者のような端正な顔立ちの男とさっきの彼がやって来た
「よし、起きたな……てめえには聞きてぇことが山ほどある」
『……誰』
「取り敢えずてめえに着いてきてもらう……話はそれからだ」
役者のような彼は少女の檻の鍵を開き、手首の枷から伸びる鎖を引っ張り、牢獄を後にした
少女は抵抗することなく着いていった
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作者名:月明かりと紅色 | 作成日時:2018年10月17日 23時